演題

胃の卵黄嚢腫瘍類似癌の1例

[演者] 竹林 隆介:1,2
[著者] 篠原 篤:1, 岡田 節雄:2
1:さぬき市民病院 外科, 2:坂出市立病院 外科

症例は80歳代の男性で,食後のつかえ感を主訴に当院を受診した.胃内視鏡にて胃角部小彎に3型病変を認め,その潰瘍底には露出血管を有していた.生検にてgroup5と診断されたが,分化度は判別不能であった.腹部造影CT検査では,胃体部小彎側を主座とした早期濃染する凹凸不整な約7cm大の巨大な腫瘤を認め,その他胃壁周囲にも早期濃染する5cm以上の大きな腫瘤を数個認めた.リンパ節転移が疑われたが,他臓器への浸潤や転移は認めなかった.血清CEA,CA19-9値は正常であったが,血清AFP値は138.2ng/mlと高値を示したことより,壁外発育型のAFP産生胃癌の診断で,胃全摘+胆嚢摘出術を施行した.術中洗浄細胞診は陰性で,小彎の腫瘤は左胃動脈幹リンパ節と一塊になっていたが,膵浸潤なくD2郭清を行った.切除標本では胃体下部小彎に3型腫瘍を認め,壁外腫瘤を含めて9×9cm大であった.病理組織検査では,癌細胞が乳頭状や充実性に浸潤増殖し,部分的にSchillar-Duval body様の構造や好酸性硝子球がみられたことより,胃癌取り扱い規約第14版に準じて卵黄嚢腫瘍類似癌(yolk sac tumor like carcinoma)と診断された.免疫組織化学ではAFPとHepatocyteはごく一部で陽性であった.進行度分類は,pT4a(SE),ly3,v3,pN2(3個),stageⅢBとなり,根治切除となった.術後血清AFP値は正常化し,術後補助化学療法としてTS-1(80㎎)を1年間内服した結果,現在術後1年10か月無再発生存中である.
胃の卵黄嚢腫瘍類似癌は,胃癌取扱い規約第14版にて,特殊型のその他の癌の一つとして新しく記載されており,AFP産生胃癌の亜型と位置付けられている.本邦での報告は稀少で,第14版となった2010年3月以降の報告は,検索しえた範囲では会議録の1例のみである.極めて稀な疾患を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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