演題

胃原発扁平上皮癌の1例

[演者] 上杉 尚正:1
[著者] 神保 充孝:1, 高橋 剛:1
1:済生会山口総合病院 消化器・一般・内分泌外科

症例は50歳代,男性.糖尿病の加療目的で近医通院中であった.黒色便,貧血に対する精査目的で上部消化管内視鏡検査が施行され,噴門部から穹窿部にかけて頂部にびらん,潰瘍を伴った巨大な粘膜下腫瘤様の病変を認めた.CT検査では,径88×64mm大の不均一に造影される粘膜下腫瘍として描出された.リンパ節腫大を複数認めたが,腹水・肝転移・肺転移・腹膜播種は認めなかった.生検組織診断の結果,扁平上皮癌と診断され2016年10月,胃全摘術を施行した.術中所見にて腫瘍の横隔膜浸潤が疑われ,横隔膜合併切除術を併施した.最終診断は,U, Post, 3型, 110×70mm, pT3(SS), pN1, cM0, fStage IIBであった.病理組織学的診断でも腫瘍内に腺癌成分を認めず,扁平上皮癌と診断された.胃穹窿部筋層深部から漿膜下層において,巨大な腫瘤の形成があり,濃染性で大小不同不整な核を有した好酸性,多角形,大型の胞体の腫瘍細胞が,細胞間橋があり,一部で角化を伴って不規則胞巣状に浸潤・増殖していた.形態は粘膜下腫瘍様で胃粘膜に露出しているが,腫瘍と粘膜の在来上皮との境界は明瞭であった.腫瘍と食道粘膜との連続性も確認できず,食道組織内にも腫瘍細胞は確認できなかった.術後経過は良好で第16病日に退院した.
胃原発扁平上皮癌は,1895年Rörigらにより初めて報告された.本邦では1930年の内藤らの報告が最初である.1983年の第40回胃癌研究会アンケート調査報告では90,636例の胃癌手術症例中,扁平上皮癌は0.09%であった.胃癌取扱い規約第12 版で「癌がすべて扁平上皮癌成分から構成されるもので,非常にまれな組織型である.一部に腺癌成分があれば,腺扁平上皮癌としなければならない.また,食道胃接合部の扁平上皮癌は.確実に胃から発生したという証拠がない限り,胃の扁平上皮癌としてはならない.」と定義が改訂された.医学中央雑誌を用いて1983 年から2016年まで「胃,扁平上皮癌」をキーワードとして検索し,腺扁平上皮癌を除外した結果,その報告例は自験例を含め54例であった.男女比は45:9 で,年齢は平均58歳(29~84 歳),占居部位はU領域が61%を占め,本症例も腫瘍の主座は穹窿部であった.早期癌の報告は2 例のみで,SS以深の進行癌がほとんどであった.本来扁平上皮が存在しない胃粘膜から扁平上皮癌が発生する病因に関しては,いまだ一定の見解は得られていない.本疾患に関し,若干の文献的考察を加えて報告する.
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