演題

消化管穿孔を契機に発見された胃未分化癌の1例

[演者] 井関 康仁:1
[著者] 中川 泰生:1, 小川 正文:1
1:山本第三病院 外科

【症例】56歳,男性.前日からの左側腹部痛を主訴に救急搬送となった.腹部所見は平坦,板状硬であり筋性防御,反跳痛を認めた.CT検査にて腹腔内遊離ガス像を認め,上部消化管穿孔と診断し,緊急手術を施行した.手術は腹腔鏡下に施行し,胃体中部前壁に約5mmの穿孔部を認め,単純閉鎖術及び大網被覆術を行った.術後,大きな問題なく経過し退院した.術後1ヶ月で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃角から胃体下部前壁に2型腫瘍を認めた.血液検査でもヘモグロビン値 5.7g/dLの貧血を認めた.貧血の原因は腫瘍部からの出血によるものと考えられた.輸血施行後,初回手術より1.5ヶ月後に開腹にて幽門側胃切除術(D2郭清)を施行した.術後,肺炎を合併したもののその他には大きな問題はなく,退院となった.【病理】摘出標本の病理検査にて明瞭な核小体を有する類円形~多形性を示す異型の強い核と好塩基性の胞体を有す腫瘍細胞がびまん性に増殖していた.免疫組織染色にてAE-1/3は陰性であるが,CAM5.2陽性であり上皮系腫瘍と考えられ,Desmin,myoglobinは陰性であり横紋筋系の腫瘍も否定的であったS-100も陰性であり神経原性腫瘍も否定的であった.Ki67およびp53は陽性であり増殖能の強い悪性腫瘍と考えられた.これらの結果より最終診断は,L, Ant, pType3, 50×70mm, undifferentiated carcinoma, pT3, intermediate type, INFb, ly2, v1, pPM0, pDM0,pN2(3/14)であり pT3N2M0 pStageIIIAであった.現在,TS-1による術後補助化学療法施行中である.【考察】胃癌取り扱い規約第14版にて胃未分化癌は「病巣のどの部分にも腺癌や扁平上皮癌などへの分化を示さない癌」と定義されており,発生頻度は胃癌全体の0.21~0.8%を占めるとされている.医学中央雑誌(1983~2016年,会議録除く)にて「胃 未分化癌」をキーワードに検索したところ報告例は14例であった.胃未分化癌は浸潤性が強く転移を来たしやすいことが報告されているが,胃穿孔を契機に発見された報告は見られなかった.本症例の治療経過,病理所見ともに文献的考察を加え報告する.
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