演題

直腸癌砕石位手術における下肢急性コンパートメント症候群の検討

[演者] 鈴木 克徳:1
[著者] 山本 真義:1, 鈴木 雄飛:1, 川村 崇文:1, 阪田 麻裕:1, 原田 岳:1, 菊池 寛利:1, 坂口 孝宣:1, 倉地 清隆:1, 今野 弘之:1
1:浜松医科大学医学部 外科学第二

【背景】近年,大腸癌手術において腹腔鏡下手術の割合が増加しており,手術侵襲は軽減される一方,開腹手術と比較して手術時間が長引く傾向にある.特に直腸癌手術においては長時間砕石位および右下頭低位となるため,圧迫による下肢急性コンパートメント症候群(Acute compartment syndrome:ACS)の発生が問題となる.発生率は1/3000人と稀ではあるが,重度の機能障害や下腿切断,急性腎不全など重篤な合併症により致死的となり得るため,予防策の構築が求められる.
直腸癌術後の下肢ACSは左下腿が好発部位であるため,今回我々は左下腿に加わる圧を測定し,砕石位および右下頭低位での違い,標準体重および肥満における違いを解析することにより,下肢ACSのリスク因子の探索を行った.
【対象と方法】健常人6人を対象とし,ブーツタイプの固定具を用い,砕石位および右下頭低位での左下腿にかかる圧をSRソフトビジョン(数値版)®を用いて測定した.さらに下腿に間歇性空気圧迫装置(IPC)装着下での圧の測定も行い,標準体重(BMI<25),肥満(BMI≧25)の2群に分け解析を行った.
【結果】肥満群において,手術開始時の体位より下腿の圧は高値を呈していた.術中操作において最も長時間さらされる右下頭低位における内側の圧は,標準体重では平均53mmHg,肥満群では平均64mmHgと約10mmHg高い値であった.褥瘡対策の基準では体圧は32mmHg以上でその発生リスクが高まるとされているが,実際には40-50mmHgを上限としている.これを肥満群では大きく上回る値であった.ここにIPCによる圧が加わるとさらに10mmHg程度上昇した.
【結論】肥満症例において砕石位での下腿の圧は有意に上昇することが示された.さらに右下頭低位での左下腿内側の圧は,肥満症例で褥瘡対策基準を上回っており,術中の定期的除圧などの対策が必要と考えられた.IPC装着はさらに圧を上昇させる原因になることが明らかとなったが,下肢静脈血栓に対する対策も考慮する必要があり,今後の対応が求められる.
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