演題

高齢結腸癌患者における術後せん妄に対する単孔式腹腔鏡下結腸切除術の有用性の検討

[演者] 西沢 佑次郎:1
[著者] 畑 泰司:1, 高橋 秀和:1, 原口 直紹:1, 西村 潤一:1, 松田 宙:1, 水島 恒和:1, 山本 浩文:1, 土岐 祐一郎:1, 森 正樹:1
1:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅰ

【はじめに】
食生活の欧米化などにより,日本における大腸癌患者数は増加の一途をたどっている.また高齢化に伴い,大腸切除術をうける高齢患者も増加傾向である.高齢者における術後合併症の中で特に重要なものとして術後せん妄があり,その頻度は20-30%との報告が多い.術後せん妄には様々な要因・誘発因子が報告されているが,身体的ストレスである術後疼痛は代表的なせん妄誘発因子の一つとして知られている.当院では以前に大腸癌患者において,単孔式腹腔鏡下手術(Single incision Laparoscopic surgery:以下SLS)が従来の腹腔鏡下手術(Conventional laparoscopic surgery:以下CLS)に比べ有意に創部痛を減少させることを報告した.そこで,今回,我々は高齢の結腸切除患者の術後せん妄発生率がSLSにおいて減少するかどうかをCLSと比較検討する事とした.
【方法】
2009年1月~2015年12月までに当院で待機的に腹腔鏡下結腸切除術を施行した75歳以上の大腸癌患者149例(SLS群:94例,CLS群:55例)に対して,患者背景・短期手術成績を後ろ向きに比較検討した.また,高齢者総合機能評価 (CGA: Comprehensive Geriatric Assessment)を術前に施行された123例を,低リスク群(低リスク,低~中等度リスク)と高リスク群(中等度リスク,中等度~高リスク)の2群に分類しSLS群とCLS群で比較検討した.
【結果】
患者背景では,年齢,性別,腫瘍局在において両群に有意な差は認めなかった.CLS群においてSLS群と比較しASA-PSが悪い症例が多かった.短期手術成績では,手術時間,出血量,開腹移行症例,術後在院日数などに両群で有意な差を認めなかったが,SLS群で有意にせん妄の発生が少なかった (13.8% vs 29.1% ; P=0.021).その他の合併症には有意な差は認めなかった.また,CGAで分類した低リスク群においてはSLS群とCLS群でせん妄の発生率に差は認めなかった.一方,高リスク群においては,せん妄の発生率がCLS群で有意に高い結果となった(P=0.001)
【まとめ】
高齢結腸癌患者における術後せん妄発症率は,CLS群と比較しSLS群において有意に低かった.中でも,術前高齢者機能評価の高リスク群において,SLSはよりせん妄を軽減する有効な手術法となる可能性が示唆された.
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