演題

術中呼気終末二酸化炭素濃度(EtCO2)が腹腔鏡下大腸癌手術の術後合併症に与える影響について

[演者] 森田 覚:1
[著者] 鶴田 雅士:1, 長谷川 博俊:1, 岡林 剛史:1, 石田 隆:1, 池端 昭慶:1, 山高 謙:1, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科

【背景】
周術期呼吸管理において,血中の二酸化炭素濃度は重要であり,呼気終末二酸化炭素濃度(以下EtCO2)はこれを反映し簡便にモニターできることから,ほぼすべての全身麻酔手術において計測され利用されている.近年増加している腹腔鏡下大腸癌手術においては二酸化炭素ガスによる気腹や頭低位などの体位変化によって術中EtCO2が開腹手術に比して高くなり,呼吸状態に影響することが懸念されているが,一方で術後肺炎を含めた手術関連合併症との関係についての報告はほとんどみられない.そこで今回我々は,当院での腹腔鏡下大腸癌手術における術中EtCO2と術後合併症との関連について,当院の治療成績をもとにretrospectiveに検討した.

【対象と方法】
2014年1月より2015年12月までに当院で腹腔鏡下大腸癌手術(根治度A,B)を施行した176例を対象とした.術中EtCO2に関しては麻酔記録を参照に平均値(EtCO2mean)を求め,術後合併症との関連について検討した.
【結果】
Clavien-Dindo分類Grade2以上の合併症は41例に認めた.その内訳は縫合不全11例,創感染6例,腸閉塞3例,その他21例であった.術後合併症群と非合併症群とを比較すると,EtCO2meanはそれぞれ37.6 mmHgと36.7 mmHgであり,有意差を認めなかった(OR:0.87,95%信頼区間[Cl]:0.77-1.00,p=0.052).年齢,性別,PS,ASA,出血量,手術時間,BMI,腫瘍深達度を交絡因子として多変量解析を行ったところ, EtCO2mean は術後合併症抑制の独立した予測因子であることが明らかとなった(OR:0.79,95%信頼区間[Cl]:0.66-0.92,p=0.004).

【考察】
従来から腹腔鏡手術によって惹起される術中Hypercapniaが術後に影響を与える可能性が懸念されたが,数少ない過去の報告にもあるように,高CO2血症に対する補助的呼吸管理が代償性に末梢組織中の高酸素化に働き,術後の合併症を抑制する可能性が考えられるが,さらなる症例の蓄積を行って検証する予定である.

【結語】
腹腔鏡下大腸癌手術において術中の高EtCO2は術後合併症増加には寄与しないことが確認された.
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