演題

リンチ症候群における大腸癌術後他臓器重複癌の検討

[演者] 田中屋 宏爾:1
[著者] 山口 達郎:2, 檜井 孝夫:3, 平田 敬治:4, 斉田 芳久:5, 松原 長秀:6, 冨田 尚裕:6, 石田 秀行:7, 渡邉 聡明:8, 杉原 健一:9
1:岩国医療センター 外科, 2:がん・感染症センター都立駒込病院 外科, 3:呉医療センター・中国がんセンター 外科, 4:産業医科大学医学部 第1外科学, 5:東邦大学医療センター大橋病院 外科, 6:兵庫医科大学病院 下部消化管外科, 7:埼玉医科大学総合医療センター 消化管外科・一般外科, 8:東京大学腫瘍外科・血液外科, 9:東京医科歯科大学

【背景】リンチ症候群は様々な腫瘍を好発する遺伝性疾患で,大腸癌術後には生涯にわたる大腸サーベイランスが推奨されているが,わが国からの大腸以外の他臓器癌に関する報告は少ない.
【対象と方法】2002年9月から2010年7月まで,124施設による多施設共同研究を行った.修正アムステルダム基準II(胃癌を関連腫瘍に加える)を満たす大腸癌患者を対象として,ミスマッチ修復遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6)の遺伝学的検査を行った.ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異が確認された大腸癌症例について,大腸以外の他臓器癌の臨床的特徴を後方視的に検討した.
【結果】67家系68例(男:32,女:36)にミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を同定した.遺伝子変異の種類は,MLH1: 35,MSH2: 31,MSH6: 2であった.初発大腸癌の平均年齢は44.5歳(24-70)で,大腸以外の他臓器重複癌は26例に39病変発生していた.大腸他臓器重複癌の内訳は,他臓器癌先行: 5,同時重複: 9,大腸先行: 16であった.他臓器癌の病変数と男女比は,胃12病変(男: 6,女: 6),子宮10病変,尿路7病変(男: 6,女: 1),小腸3病変(男: 1,女: 2),その他7病変(男: 2,女: 5)で,遺伝子変異の種類は胃(MLH1: 6,MSH2: 6),子宮(MLH1: 4,MSH2: 5,MSH6: 1),尿路(MLH1: 1,MSH2: 6),小腸(MLH1: 0,MSH2: 3),その他(MLH1: 2,MSH2: 5)であった.
初発大腸癌術後における異時性他臓器重複癌累積リスクは,術後10年: 43.8%,術後20年: 56.2%であった.術後10年の累積リスクは男: 28%,女: 39%,MLH1: 28%,MSH2: 39%で,性別(男 vs 女, P=0.81),変異遺伝子の種類別(MLLH1 vs MSH2, P=0.34)による有意差を認めなかった.
【結語】リンチ症候群は大腸癌と他臓器重複癌の高リスク群と報告されているが,日本人のリンチ症候群患者において,初発大腸癌の術後他臓器重複癌累積発生率(術後10年: 43.8%)は,術後異時性大腸多発癌累積発生率(術後10年: 26.3%)よりも高頻度であった.特に,胃,子宮内膜や,男性のMSH2変異例における尿路の重複癌が多かった.リンチ症候群を的確に診断し,胃・子宮内膜・尿路などを対象としたサーベイランスを実施することの必要性が示唆された.
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