演題

直腸癌剥離面におけるCRM評価における,剥離面組織,並びに骨盤剥離面洗浄液に対するRT-PCR評価の有用性

[演者] 原 賢康:1
[著者] 安藤 菜奈子:1, 柳田 剛:1, 前田 祐三:1, 志賀 一慶:1, 高橋 広城:1, 竹山 廣光:1
1:名古屋市立大学大学院 消化器外科学

【目的】直腸癌の局所再発予測因子として直腸剥離面から腫瘍最深部までの距離CRM (circumferential resection margin)が重要とされている.この病理学的検索は骨盤壁内の遺残腫瘍細胞を推測するうえで有用とされているが標本作成上のアーチファクト,最深部をきちんと評価できているかなど未だ問題は多い.また腫瘍最深部以外で露出するリンパ節に関しても評価が困難である.また従来の術中迅速組織診においても適切な部位を採取できているかという点で不確実性の恐れがある.そこで今回我々は直腸剥離面組織と,剥離面洗浄液の双方に対しPCRを施行,CRMとの相関と局所再発との関連を評価した.
【方法】対象は2013年4月から当院にて治癒切除を施行した76例で,男女比は51:25.平均年齢は68.3才.腫瘍局在はS状結腸~Rs: 33,Ra: 18,Rb: 25.深達度はT1: 9,T2: 19,T3: 33でT4: 15であった.リンパ節転移は30例で陽性で遠隔転移を伴う症例は4例であった.術後観察期間の中央値は22か月であった.これら症例の手術時,直腸剥離操作終了後腸管切離前に骨盤壁,剥離腸管を生食100mlにて穏やかに洗浄,回収する.また24例においては腫瘍摘出後に腫瘍最深部と思われる部位を1mm四方,極力薄く剥離し採取した.これらに対しCEAmRNAをprimerとしてRT-PCRを施行した.
【成績】 76例中洗浄液PCRが陽性となったのは8例(10.5%)であった.また剥離面組織中PCRが陽性となったのは24例中8例であったが(33.3%),双方とも陽性となった症例は認めなかった.病理組織学的検査にてCRM値は≦1mmが8例,1mm~5mmが8例で>5mmが60例であった.CRM別に見た平均PCR値は洗浄液では≦1mm: 0.82,1mm~5mm: 0,>5mm: 0.03で,剥離組織では≦1mm: 0,1mm~5mm: 0.07,>5mm: 0.06であった.経過観察中3例(4%)で局所再発を認めた.再発例におけるPCR結果は洗浄液で3例中3例において陽性であった(100%)のに対し,剥離組織では1例中0例(0%)で陽性であった.今回の検討においては洗浄液中のCEAmRNA検出の方が,剥離組織中のCEAmRNAの検出に比して有用であったと考えられる.
【結論】 術中にCRMを評価するには骨盤内の洗浄液中のPCRが有用となる可能性が示唆された.
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