演題

大腸癌周囲の間質におけるmiRNA発現変化とTenascin C発現亢進は肝転移形成に関与する.

[演者] 村上 智洋:1
[著者] 菊池 寛利:1, 廣津 周:1, 松本 知拓:1, 尾﨑 裕介:1, 川端 俊貴:1, 平松 良浩:1, 神谷 欣志:1, 坂口 孝宣:1, 今野 弘之:2
1:浜松医科大学医学部 外科学第二, 2:浜松医科大学

【緒言】癌転移において,癌微小環境を構成する癌間質細胞の関与が重要である.癌間質相互作用に関わる遺伝子発現を制御する小分枝としてmiRNAが知られている.近年,癌細胞のみならず癌間質特異的に変化するmiRNAも報告されている.今回,大腸癌周囲の間質におけるmiRNA発現変化を解析し,大腸癌肝転移への関与を検討した.
【方法】当科において過去12年間に切除された,化学療法歴のないStageII/III大腸癌20症例(無肝転移再発10例,同時性肝転移5例,術後肝転移再発5例)の原発巣切除検体のホルマリン固定組織標本からlaser capture microdissection法にて腫瘍間質組織を採取し,total RNAを抽出した.TaqMan miRNA Arrayを用いてmiRNA発現を測定し,miRNA 発現パターンと同時性・異時性肝転移の有無との関係を解析した.
【結果】miRNA発現のクラスタリング解析では,同時性肝転移群と異時性肝転移群+無肝転移再発群の2群に分類された.異時性肝転移群+無肝転移再発群と比較して同時性肝転移群において発現が亢進しているmiRNAとしてmiR-518b,miR-618, miR-186などが,発現が低下しているmiRNAとしてmiR-302a, 551b, 627などが同定された.In silico解析にて同時性肝転移群で発現が低下しているmiRNAの標的遺伝子の一つとしてTenascin C(TNC)が新規マーカー候補として同定された.免疫組織学的解析にて,139例の前治療歴のない大腸癌原発巣間質におけるTNC蛋白の発現強度および発現範囲と,同時性肝転移の有無,術後全生存率および術後無肝転移再発期間との間に有意な相関を認めた.原発巣139例および肝転移巣83例(化学療法あり51例,なし32例)を比較したところ,化学療法の有無に関わらず肝転移巣の腫瘍間質でTNC発現が高強度かつ広範囲であった.
【結語】大腸癌原発巣の腫瘍周囲間質におけるmiRNA発現変化により発現が亢進するタンパクとしてTNCが同定された.原発巣の腫瘍間質におけるTNC発現が高いほど予後不良であり,肝転移巣の間質ではTNC発現が亢進していた.大腸癌の肝転移形成過程におけるTNCの重要な役割が示唆される.
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