演題

持続性腹膜透析患者に対する腹腔鏡下結腸切除術の2例

[演者] 笹生 和宏:1
[著者] 高橋 秀和:1, 原口 直紹:1, 西村 潤一:1, 畑 泰司:1, 松田 宙:1, 山本 浩文:1, 水島 恒和:1, 土岐 祐一郎:1, 森 正樹:1
1:大阪大学医学部附属病院 消化器外科

【背景】腎不全患者の増加や透析技術の進歩に伴い,慢性腎不全に対する重要な治療法の一つである持続性腹膜透析(以下,CAPD)は増加傾向である.CAPDを施行している症例に対して開腹手術を施行した場合には,創部感染や腹腔内癒着などの合併症が高率に起こると報告されている.今回,長期にCAPDを施行している大腸病変を伴う症例に対して腹腔鏡下切除術を施行し良好な短期経過を得た2例を経験したので報告する.【症例1】30代,女性.家族性大腸ポリポーシス(以下,FAP)に対し,多中心性に癌化が疑われ,大腸全摘出手術及び回腸瘻増設術を施行した症例.10代に先天性低形成腎に対して両側腎移植を受けるも,両側無機能腎となり20代で透析導入となる.11年前にシャント維持が困難となり,腹膜透析導入となった.術後は血液透析(以下,HD)に移行し,早期にCAPD再開を検討していたが,腹膜の病理診断で被嚢性腹膜硬化症が疑われたため,CAPDはしばらく休止することとなった.術後5日目より食事開始となり,術後13日目に透析病院へ転院となった.【症例2】70代,男性.S状結腸癌に対し,手術の方針となった症例.急性糸球体腎炎疑いで腎機能が悪化し,透析導入となった.腹膜透析導入後9年目であり,その間2回腹膜炎を起こした.S状結腸癌に対し,腹腔鏡下S状結腸切除術を予定していたが,術中所見にて主病変の口側S状結腸浸潤(SI)及び骨盤内に腹膜播種(P2)を複数個認めたため,腹腔鏡下に前方切除術及び結腸瘻増設術を施行した.術後は血液透析に移行し,腫瘍の腹膜播種を認めたため,CAPD再開は断念した.術後,6日目に食事開始となり,術後17日目に退院となった.術後,38日目より化学療法が開始となった.【考察】CAPD患者は対する腹腔鏡下手術を計画する際,腹腔内の癒着が懸念されるが,今回の検討においては両症例とも癒着は軽度で安全に腹腔鏡下手術を開始することが可能であった.また従来報告のある,透析液灌流による腹腔内圧の上昇や組織の脆弱性により,腹膜の創傷治癒遅延や腹腔内感染症などの問題が散見されてきたが,両症例とも腹腔鏡下に完遂可能であり,周術期の経過も良好であった.若干の文献的考察を含め報告する.
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