演題

脳室腹腔シャント留置例に対して腹腔鏡下手術を施行した3例の検討

[演者] 市川 善章:1
[著者] 松田 宙:1, 水島 恒和:1, 高橋 秀和:1, 原口 直紹:1, 西村 潤一:1, 畑 泰司:1, 山本 浩文:1, 土岐 祐一郎:1, 森 正樹:1
1:大阪大学医学部附属病院 消化器外科

脳室腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt; 以下VPS)は水頭症患者に対する必須の外科的治療法であり,しばしば消化器外科領域でもVPS留置症例に遭遇する.近年,消化器手術に対して腹腔鏡手術が急速に普及することに伴って,VPSを有する症例の腹腔鏡手術の機会が増加している.特に腹腔鏡手術は腹腔内を気腹するため,逆行性感染や頭蓋内圧上昇などの予防のためにシャントチューブを一時的にクランプ,もしくは外瘻,腹腔から心房や胸腔への経路の変更など様々な処置や管理が行われるようになった.今回われわれは,逆流防止機能のあるVPS症例3例に対して脳外科にコンサルトの上で,無処置下で通常の気腹圧(10mmHg)及び通常の体位(砕石位,頭低位15度)にて腹腔鏡手術を施行可能と判断した.症例1は67歳,男性.くも膜下出血に対してクリッピング手術及び続発性水頭症に対してVPS留置術が施行されていた.盲腸癌に対して腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.症例2は44歳,男性.先天性水頭症に対してVPS留置施行されていた.潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術後の回腸嚢会陰皮膚瘻に対して腹腔鏡下回腸嚢切除,回腸人工肛門造設術を施行した.術中に腸管損傷を認めたが術中及び,術後の抗生剤投与で対応した.症例3は78歳,男性.くも膜下出血に対してクリッピング手術及び続発性水頭症に対してVPS留置術が施行されていた.直腸癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.3例とも術翌日に頭部CTにて脳室の拡大所見などの異常がないことを確認した.術後経過中にVPS機能不全や髄膜炎,頭蓋内圧亢進症状は認めなかった.事前にVPSの走行や閉塞,逆行性感染等の合併には留意する必要はあるが,逆流防止機能のあるVPS症例においては脳外科との連携の下で,通常の気腹下及び通常の体位で腹腔鏡下手術が施行可能であった.VPS留置例に対する腹腔鏡下手術に関して,若干の文献的考察を含めて考察する.
詳細検索