演題

PP7-5

LCSを用いたTAPP手技の利点

[演者] 植木 知身:1
[著者] 沖田 憲司:1, 西舘 敏彦:1, 秋月 恵美:1, 伊東 竜哉:1, 河野 剛:1, 石井 雅之:1, 古畑 智久:1, 竹政 伊知朗:1
1:札幌医科大学医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座

一般にTAPPに使用するエネルギーデバイスは,バイポーラーまたはモノポーラー電気メス,LCSが使用されている.それらの器具の中で,LCSの特徴は止血力が強いこと,組織の把持が可能であることである.LCSにて組織を把持できることは,鉗子の入れ替えを行わずに細かく剥離層に連続して適切な緊張を与え続けられるため大きな利点となる.当科では術野の保持と止血力を目的としてLCSを導入した.術野を保持できる結果として,現在ではほぼ鈍的剥離を行うことなく正確な剥離層を維持し,かつ出血せずに手術を遂行できるようになった.その術式のポイントを紹介する.
①Trapezoid of disasterの腹膜剥離では,腹膜のみを適切に牽引しながら腹膜前筋膜深葉と腹膜の間の層を剥離していく.LCSを用いて癒合の強い部分を切離し,正確に層を保ちながら剥離を続ける.②spermatic sheathはやや癒合の強い部位であり,また精巣動静脈,精管に伴走する細かな血管が存在している.LCSを用いて伴走血管をメルクマールに癒合を切離し,出血することなくspermatic sheathを腹膜から剥離する.③精管の内側には比較的丈夫なsecondary internal inguinal ring(SIIR)が存在しており,鋭的切離を要する組織である.精管周囲の血管は血流が多く一度出血すると止血に難渋する.その際には精管の血流不全も憂慮される.精管の血管を認識し,出血することなくSIIRを適切に認識し鋭的切離することで,Retzius腔に至る.④恥骨背側に存在するcorona mortis,retropubic veinは出血した際に出血量が多いため,出血しない工夫が必要である.Retzius腔に適切な緊張をかけることで結合組織が認識できる.Retzius腔の結合組織は一定の厚みがあるため,結合組織の切離線を前述の静脈の表面が露出しないよう結合組織で被覆される層に設定する.設定した層に沿って結合組織を鋭的切離することで,これらの静脈に過度な緊張をかけずに,かつ表面を露出し直接触れることもないため,出血を予防できる.
鈍的剥離では正確な層を剥離しても極微細な出血が積み重なってしまう.またspermatic sheath周囲や精管周囲は出血しやすく出血のために層の認識に支障がでてしまうことがある.TAPPにおいて,LCSを用いた鋭的切離にて剥離操作を行うことは,出血がほとんどなく手術を進めることが可能で,鈍的剥離を用いた従来の手技よりも正確な層で手術を進めることができる大きな利点があると思われる.
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