演題

PD04-6

腹腔鏡下肝切除は肝切除後肝不全を減少させるか? ~切除割合を加味した検討~

[演者] 田浦 康二朗:1
[著者] 山本 玄:1, 西尾 太宏:1, 奥田 雄紀浩:1, 池野 嘉信:1, 吉野 健史:1, 瀬尾 智:1, 石井 隆道:1, 安近 健太郎:1, 上本 伸二:1
1:京都大学大学院 肝胆膵・移植外科学

[背景]腹腔鏡下肝切除は開腹肝切除に比較して術後肝不全(posthepatectomy liver failure ; PHLF)の発生頻度が減少するとの報告が見られる.従って腹腔鏡下肝切除はより肝機能の悪い症例に対しても肝切除の適応を拡げられる可能性を有している.しかしながらこれら報告は後ろ向き観察研究が大部分であり患者選択バイアスがもたらした結果である可能性があること,更にはPHLF発生に極めて大きな影響を与える因子である「肝切除割合(resection rate ; RR)」が考慮に入れられていないのが問題である.当科では2011年9月より前向きにRRを含む様々な周術期因子をデータベース化している.今回,このデータベースを用いて腹腔鏡下手術がPHLF発生に与える影響について検討した.
[方法]2011年9月より当科で肝切除を施行した肝細胞癌患者249例を対象とした.PHLFはISGLSの定義により判定した.腹腔鏡下切除(腹腔鏡補助下手術を含む)群(Lap群:64例),開腹切除群(Op群:185例)について周術期因子及びPHLFを含む術後アウトカムについて比較検討した.
[結果]Lap群で術前T-Bil値は有意に高値,PLT,ICG-K値は低値,肝硬変(F4)の割合は高く,やや肝機能不良症例を対象としている傾向が見られた.にもかかわらず,PHLF grade B以上はLap群2例(3%),Op群24例(13%)であり,Lap群で有意に低値であった(p=0.0264).胸水,腹水発生頻度,PT-INRやT-Bilの術後最高値もLap群で低値であった.反面,RR平均値はLap群10.7%,Op群24.5%(p<0.0001)であり,Lap群ではより小さな切除の頻度が高かった.これによるバイアスを可及的に排除するために,RRが20%未満の症例(Lap群:52例,Op群:89例)に限って解析を行った.PHLF grade B以上はLap群2例(4%),Op群8例(9%)であり,有意差は消失した(p=0.2511).胸水,腹水の発生率,術後T-Bil最大値においても有意差は消失した.
[結語]当科症例の検討では,Lap群でPHLF発生頻度の減少が見られたが,これはRRが低いことによる可能性があると思われた.また,腹腔鏡下手術は比較的容易な症例に限って施行されていたという選択バイアスによる可能性も否定しきれない.腹腔鏡下肝切除によるPHLF発生低減のアドバンテージを謳った既報においてもこれらバイアスの可能性を否定し得ず,腹腔鏡下肝切除が真に肝機能不良症例に対して肝切除の適応を拡大しうるか否かについてはさらなる症例の集積と検討を待たねばならないだろう.
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