演題

PD04-5

3D画像解析による肝切除後再生率の検討とその理論に基づく新しいコンセプトの腹腔鏡下肝部分切除術の提案

[演者] 中野 容:1
[著者] 板野 理:1, 阿部 雄太:1, 篠田 昌宏:1, 北郷 実:1, 八木 洋:1, 日比 泰造:1, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科

【背景】現在,肝切除の術式は腫瘍の局在と解剖学による肝区分に当てはめた定型術式が用いられている.しかし3D画像シミュレーション解析の発達により,理論的に考えると,根治性を落とさずに必要最低限の領域の切除を行える症例が多数存在する.また化学療法を含めた集学的治療の重要性は増しており,なるべく多くの肝実質を温存することが成績の改善につながるはずである.本報告では,その理論的背景として3D画像シミュレーション解析による肝切除後長期肝再生率の検討結果および,それをもとに腹腔鏡下手術の利点を生かした腫瘍の第3-4分枝のレベルの責任グリソン領域(cone unit)を複数組み合わせる新しいコンセプトの腹腔鏡下肝部分切除,Laparoscopic Parenchymal-Sparing Anatomical Liver Resection(LaPSAR)の手技と成績を報告する.
【対象・方法】①2013年4月から2015年8月までに当院で施行された肝切除症例92例を対象に,術前,術後3/6/12ヶ月での肝容量を測定し,肝切除後の再生率(=術後3/6/12ヶ月での肝容量÷術前肝容量)を求め,さらに再生率に関わる因子を後方視的に解析した.②2013年4月からのLaPSAR適応症例に関する手術成績をまとめた.
【結果】①術後3/6/12ヶ月の平均再生率はそれぞれ,0.83(0.39-1.11)/0.84 (0.45-1.16)/0.85(0.47-1.13)であった.術後12ヶ月の時点で術前の肝容量まで再生している症例は15例(16.3%)であった.再生率に関して,切除率が有意な独立した予測因子であり(P<0.01),どのような術前肝機能であっても切除量が多いほど術後の長期肝容量は減少することが明らかとなった.再生率と有意な相関関係にある因子として,術前血清Ⅳ型コラーゲン7S(ρ=-0.224, P=0.034),血清アルブミン(ρ=0.317, P=0.002),切除率(ρ=-0.428, P<0.001)が同定された.
②2013年4月より適応症例37例(肝細胞癌23例,肝転移9例,その他5例)にLaPSARを施行した.手術時間中央値448分,出血量中央値270ml,術後在院日数中央値10日,全例でR0切除が得られた.3D画像解析によると,この術式を用いることで既存の適応系統的切除(葉切除,区域切除,亜区域切除)を選択した場合より,全肝容量に対して平均18.6%の肝容量を温存することが可能であった.
【結語】肝臓をできる限り温存するLaPSARは,腹腔鏡下手術の利点を生かし術後残肝機能に配慮した術式と思われる.
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