演題

PN9-6

腹部大動脈瘤に対する開腹人工血管置換術後の腹壁瘢痕ヘルニア症例の検討

[演者] 西田 洋児:1
[著者] 木村 圭一:1, 鷹合 真太郎:1, 川上 恭平:1, 吉田 周平:1, 加藤 寛城:1, 森山 秀樹:1, 飯野 賢治:1, 竹村 博文:1
1:金沢大学附属病院 先進総合外科

【はじめに】開腹手術後の腹壁瘢痕ヘルニアは11~23%に生じるといわれており,特に腹部大動脈瘤に対する開腹手術後には結合組織異常のため術後腹壁瘢痕ヘルニアの発症リスクがより高くなると報告されている.今回我々は過去約3年6ヶ月間で施行した開腹人工血管置換術症例を後方視的に検討し,術後腹壁瘢痕ヘルニア発症の危険因子を検討した.【対象】2013年1月から2016年7月までに開腹人工血管置換術を施行した63例(待機55例,緊急8例).腹壁瘢痕ヘルニアの診断は身体所見と術後に施行したCT検査にて行った.【結果】術後腹壁瘢痕ヘルニアは4例(6.3%)に認めた.平均年齢は65.7±6.2歳,男性3例,女性1例であった.いずれも待機手術症例で術後腹壁瘢痕ヘルニアと診断されるまで平均10.2±2.8か月であった.術前併存症は糖尿病,高血圧症をそれぞれ2例ずつ認め,開腹手術の既往のある症例は認めなかった.腹壁瘢痕ヘルニアを認めた2例に腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した.腹壁瘢痕ヘルニアを認めた群(n=4)と認めなかった群(n=59)では,年齢(65.7±6.2歳:70.3±6.5歳,p=0.91),術前BMI(23.1±3.7:23.5±2.6,p=0.59),皮下脂肪の厚さ(19.2±5.3mm:16.3±6.2mm,p=0.18),手術時間(287±43min:275±73min,p=0.37),出血量(1357±767ml:1533±1074ml,p=0.62),輸血量(590±690ml:776±1086ml,p=0.63)に有意差は認めなかった.開腹人工血管置換術後の合併症は腹壁瘢痕ヘルニアを認めた群では1例に創部SSIを認めていたが腹壁瘢痕ヘルニアを認めなかった症例では創部SSIは1例も認めなかった.また腹壁瘢痕ヘルニアを発症した4例のうち2例は開腹手術経験の少ない若手心臓血管外科医が執刀した連続26症例中初期の2例であった.【考察】開腹人工血管置換術後の腹壁瘢痕ヘルニアの発症に,年齢,BMI,皮下脂肪の厚さ,手術時間,出血量,輸血量は関与せず,創部SSIや執刀経験の浅い若手心臓血管外科医による閉創がリスク因子と考えられた.【結語】当科における開腹人工血管置換術後の腹壁瘢痕ヘルニアは6.3%と他施設での報告より少なく十分満足のいく結果であった.近年ステントグラフト内挿術の普及に伴い心臓血管外科医が開腹閉腹する機会は減少すると予想される.限られた症例のなかで若手心臓血管外科医の教育やトレーニングシステムの構築が必要であると考えられた.
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