演題

TAPP法における膜の局所解剖からみた鼠径部ヘルニア手術の要点と盲点

[演者] 早川 哲史:1
[著者] 北山 陽介:2, 犬飼 公一:2, 原田 真之資:2, 辻 恵理:2, 上原 崇平:2, 高嶋 伸宏:2, 宮井 博隆:2, 山本 稔:2, 田中 守嗣:2
1:刈谷豊田総合病院 腹腔鏡ヘルニアセンター, 2:刈谷豊田総合病院 消化器・一般外科

鼠径ヘルニアの治療は,Hesselbach三角,内鼠径輪,外側三角,大腿輪のすべてを覆って修復することが重要である.メッシュを展開する層構造の認識は重要であり,特にTAPP法では重要である.腸骨下腹神経,腸骨鼠径神経,大腿外側皮神経,陰部大腿神経の大腿枝と陰部枝を損傷することなく,メッシュ展開時や剥離時にもできる限り神経とメッシュが接することがないように注意を払う必要がある.腹壁側では腹膜,腹膜前筋膜深葉,腹膜前筋膜浅葉,横筋筋膜は最終的には癒合する.この腹壁側での膜構造の癒合や融合する位置は,各個人によって異なっている.背側では腹膜と腹膜前筋膜深葉は癒合することはない.腹膜前筋膜深葉と腹膜前筋膜浅葉の間に輸精管と精巣血管が存在し,各神経系は腹膜前筋膜浅葉より背側に存在する.各神経は膜癒合と融合が生じた部位より貫通して表層に出てくると思われる.したがって,メッシュの展開位置は腹壁側では腹膜と腹膜前筋膜深葉が癒合した層と腹膜前筋膜の浅葉の間に留置し,背側は腹膜と腹膜前筋膜深葉は癒合しないので,腹膜と腹膜前筋膜の間に留置することが重要である.この展開層をできる限り守ることでメッシュと各神経が接することなく,メッシュと横筋筋膜も接することなく,疼痛が最も少ない最適な手術が可能となる.当院ではメッシュ展開までの解剖学的層構造の剥離をステップ化して定型化している.ステップ1では,腹膜と腹膜前筋膜深葉が癒合する背側での腹膜切開と剥離から開始する.腹膜切開はヘルニア嚢に沿って,外鼠径輪方向に縦にスリットを入れる.ステップ2では輸精管の上方で超音波凝固切開装置にて腹膜と癒合した腹膜前筋膜深葉を同時に切開し,腹膜前腔に入る.側面から腹壁側は,腹膜と腹膜前筋膜深葉は癒合していますので,癒合位置を確認して同時に切開剥離する必要がある.下腹壁動静脈は腹膜前筋膜浅葉より腹壁側にありますので,腹膜と深葉の癒合膜を切開剥離すれば絶対に損傷することはない.ステップ1ですでに切開してある腹膜前腔につなげることで腹壁側と層が連続することになる.腹膜前腔ではCooper ligament の位置より上方に剥離を行い,腹直筋外縁の腱膜弓を確実に確認することが重要である.外鼠径ヘルニア中に,内鼠径型のde novo型ヘルニアが存在する.de novo型ヘルニアに対する分類を述べ,手術を困難としているポイントとTAPP法の要点と盲点について述べる.
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