演題

高解像度食道内圧検査(HRM)を用いた食道癌手術における咽頭および上部食道括約筋機能の検討

[演者] 田中 雄二朗:1
[著者] 西川 勝則:1, 高橋 慶太:1, 湯田 匡美:1, 星野 真人:1, 松本 晶:1, 谷島 雄一郎:1, 矢野 文章:1, 三森 教雄:1, 矢永 勝彦:2
1:東京慈恵会医科大学附属病院 消化管外科, 2:東京慈恵会医科大学附属病院 肝胆膵外科

(背景・目的)近年食道癌手術は手術手技や周術期管理の進歩により術後合併症は軽減してきているが,術後QOLに関して十分な検討はされていない.食道切除再建後は嚥下に関わる諸症状の出現が顕著なQOL低下としてみられるが,その病態について未だ十分な解明はなされていない.今回,食道癌術後の嚥下機能の評価として,食道良性疾患の機能評価で使われている高解像度食道内圧検査(HRM)を用いて,咽頭および上部食道括約筋に及ぼす影響について検討した.
(対象・方法)2015年10月~2016年11月までに食道癌に対し食道亜全摘,胃管再建術を施行した30例中,術前高度狭窄や術後縫合不全症例を除き,HRMの同意が得られた13例(平均年齢68歳,男性/女性= 9/ 4例)を対象とした.HRMを用いて上部食道括約筋最高静止圧(UESP),上部食道括約筋収縮圧(UESC),中下咽頭・UES・上部食道における嚥下伝搬速度,UES弛緩時間を測定した.検査は術前と術後1カ月目に施行し,術前後で咽頭と食道における運動機能の比較を行った.
(結果)13例中4例に術後反回神経麻痺を認め,うち2例に高度な誤嚥がみられた.術前後の平均UESPとUESCはそれぞれ47±12 vs. 38±29mmHg,238±39 vs. 284±74mmHgであり,術後にUESPは低下,UESCは上昇する傾向がみられた(P=0.09, 0.05).術後の嚥下伝搬速度は咽頭/ UES/上部食道で約11/ 10/ 4cm/秒と計測され,術後での変化は認められなかったが,7例は上部食道の蠕動を確認できなかった.UES弛緩時間は術前後とも約0.7秒と同等であった.反回神経麻痺を認めた2例のうち1例は嚥下に随伴する上部食道括約筋(UES)の弛緩不全がみられ,蠕動の協調運動障害と判定された.
(考察)HRMは,従来の食道内圧検査で評価しにくい咽頭から上部食道の蠕動運動を内圧の変化として正確に観察記録することができた.食道癌術後にみられたUESP低下とUESC上昇は術後の嚥下に伴う症状と関連する可能性が示唆された.また,反回神経麻痺症例でみられたUESの弛緩不全は誤嚥発生の要因のひとつと考えられた.今後更なる症例の蓄積を行い,術後の嚥下機能の評価を行う予定である.
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