演題

食道癌術後の嚥下機能に対する術前栄養状態の影響についての検討

[演者] 真船 太一:1
[著者] 民上 真也:1, 佐々木 奈津子:1, 佐治 攻:1, 松下 恒久:1, 榎本 武治:1, 眞木 二葉:2, 杤本 しのぶ:3, 大坪 毅人:1
1:聖マリアンナ医科大学病院 消化器・一般外科, 2:聖マリアンナ医科大学病院 神経内科, 3:聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーション部

【はじめに】一般的に食道癌術後には嚥下機能が低下する症例がある.当院では術前,術後に嚥下造影検査(Videofluoroscopic examination of swallowing:以下VFと表記)を施行し,嚥下障害症例を抽出して食事開始時期の決定や嚥下リハビリテーションに生かす取り組みを行ってきた.こうした取り組みの中で頸部操作を含む食道癌術後の嚥下障害の特徴や頻度に関しこれまで報告してきたが,術前に嚥下障害を予測できる因子に関しては明らかとなっていない.一方,術前の栄養状態が術後の合併症の予測因子であることが知られている.今回我々は,術前の栄養状態に着目しVFで判定した嚥下障害の予測因子なりうるかどうかに関する検討を行った.【方法】対象は2014年4月から2016年11月までの期間で,食道癌に対し頸部操作を含む胸腔鏡腹腔鏡補助下食道亜全摘術,2領域または3領域郭清,頸部食道胃管吻合を施行し,術前と術後7日目にVFを施行しえた29例とした.栄養状態の指標は術前に計測したプレアルブミン,Prognostic nutritional index(以下PNIと表記)を用い嚥下障害の予測因子となりうるか検討を行った.また術前の栄養状態と交絡しそうな因子として性別,癌の臨床病期,術前のVFにおける何らかの嚥下機能低下をあげ,それぞれと術後の嚥下障害との関係も検討した.尚,「嚥下障害」とは術後7日目のVF後に食事が開始できないと判断される程度の嚥下機能低下と定義した.【結果】術後7日目のVFにて何らかの嚥下機能の変化を指摘された症例は82.7%であり,29例中11例にあたる37.9%の症例は経口摂取開始が困難にて嚥下訓練を要した.栄養状態と嚥下障害との関係をみるとPA,PNIが低下した症例では嚥下障害となる頻度が多い傾向にあり,特にPNIでは有意な差を示した(p=0.022).交絡因子として挙げた年齢,術前の臨床病期,術前のVFにおける何らかの嚥下機能低下との関係では,有意な傾向を示すことができなかった.PNIに関してROC曲線を作成し嚥下障害となる場合のカットオフ値を調べると46となり,AUCは0.755であった.嚥下障害をきたした症例11例中10例はリハビリにて通常食摂取が可能となった.嚥下障害改善までに要した期間は平均46.3日であった.【結語】今回の検討では術前の栄養状態,特にアルブミンと免疫機能を示すリンパ球数の合成値であるPNIが術後の嚥下機能を予測因子として活用できる可能性が示唆された.
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