演題

食道癌の胸腔鏡下食道切除術における術後肺炎のリスクと予後に関する検討

[演者] 新田 美穂:1
[著者] 小熊 潤也:1, 數野 暁人:1, 二宮 大和:1, 中郡 聡夫:1, 貞廣 荘太郎:1, 小澤 壯治:1
1:東海大学医学部 消化器外科学

【背景】従来, 食道癌根治術は, 手術侵襲が大きく合併症発生率が高いとされており,特に術後肺炎の重篤化は救命困難な場合もある.胸腔鏡下手術は, 呼吸機能の面からも低侵襲性が期待されるが,術後肺炎は一定の割合で生じるとされている.今回われわれは,食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術において,術後肺炎に関する各リスク因子・評価法と予後に関して検討した.【方法】2009年9月から2016年10月に,食道癌に対し胸腔鏡下食道切除胃管再建術を施行した222例を対象とした.リスク因子として,年齢,性別,BMI, 既往歴(心・呼吸器疾患,糖尿病 ), 収縮期血圧,脈拍数,ASA分類, 喫煙歴(術前2か月以内,1年以内),Brinkman index, 術前化学療法, 術前化学放射線療法, 血液生化学検査,呼吸機能検査, 出血量, 手術時間, 胸部操作時間, 輸血, 術後ICU入室時の血液ガス検査とその関連項目(AaDO2, P/F ratio, Respiratory Index), リスク評価法は, Glasgow Prognostic Score (GPS), E-PASS, POSSUM score, PNI, 好中球リンパ球比に関して検討した. Clavien-Dindo分類のGrade II以上を術後肺炎ありとした. 【結果】術後肺炎は71例(32%)に発生した.単変量解析では,BUN(オッズ比1.074, 95%CI: 1.008-1.143, P<0.027), 脈拍数(オッズ比1.048, 95%CI:1.024-1.074, P<0.001), AaDO2 (オッズ比1.006, 95%CI:1.0-1.013, P=0.037), Respiratory Index (オッズ比 1.262, 95%CI:1.034-1.540, P=0.022)が, 多変量解析では,脈拍数(オッズ比1.062, 95%CI :1.033-1.09, P<0.001)とGPS(オッズ比3.262, 95%CI :1.558-6.832, P=0.02)が術後肺炎のリスク因子となった.全生存割合における1年生存率は,術後肺炎群75.2%, 非肺炎群90.6%, 5年生存率は,術後肺炎群57.7%, 非肺炎群64.9%であり,術後肺炎群が予後不良である傾向にあったが,有意差は認めなかった(P=0.115).ステージ別の全生存割合は,Stage II(TNM分類)において,有意差を持って,術後肺炎群は非肺炎群に比べて予後不良であった(P=0.039).【結論】胸腔鏡下食道切除術における術後肺炎の発症予測として,術前の脈拍数やGPSが有用である可能性があった.術後肺炎群の予後は,非肺炎群に比べて予後不良である傾向があり,食道癌に対する胸腔鏡下食道手術後の生存率延長のためには,術前の肺炎予測の精度向上が重要であることが示唆された.
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