演題

食道癌術後肺炎のリスク因子の検討

[演者] 林 雅人:1
[著者] 竹内 裕也:1, 福田 和正:1, 中村 理恵子:1, 須田 康一:1, 和田 則仁:1, 川久保 博文:1, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科

背景
食道癌根治術は他の消化器手術と比較し高度な侵襲を伴い, 術後合併症発症率は45%に上ると報告されている. 中でも呼吸器関連合併症は最も頻度の高い合併症であり, 在院死亡原因の一つとなっている.今回我々は抗菌薬の治療が必要となったClavien-Dindo分類Ⅱ(CDⅡ)以上の食道癌術後肺炎のリスク因子の検討をおこなった.
方法
2012年1月から2016年10月までで,当科で施行した食道癌に対する開胸開腹を伴う胸部食道全摘術・一期的胃管再建術の207例を対象とした.術後から退院までの入院期間でCDⅡ以上の肺炎を発症した群(肺炎(+))と肺炎を発症しなかった群(肺炎(-))群の2群に患者を群別し,食道癌術後肺炎のリスク因子を検討した.後ろ向きの検討で,レントゲン検査,若しくはCT検査にて肺野に浸潤影が認められ,発熱,炎症反応高値といった所見が認められたものを肺炎とした.手術時年齢,性別,術前1秒量,術前%肺活量,術前BMI(Body Mass Index),術前補助療法の有無,内視鏡治療の有無を食道癌術後肺炎のリスク因子か否かを検討した.術前1秒量は2.40 Lをcutoff値とし,術前1秒量低値群と高値群に群別し検討を行った.
結果
症例207例中,男性は171例(82.6%)で女性は36例(17.4%)であった.手術時の平均年齢は64.3歳であった.術前%肺活量の平均値は102.2%,術前BMIの平均値は21.2であった.CDⅡ以上の食道癌術後肺炎は55例(26.6%)であった.術前1秒量の全体の平均値は2.72 Lであり,肺炎(+)群の平均1秒量は2.57 Lで,肺炎(-)群の平均1秒量は2.77 Lであった.手術時平均年齢,術前%肺活量,術前BMI,術前補助療法の有無,内視鏡治療の有無はいずれも両群間で有意な差は認めなかった.術前1秒量ではp値は0.03 (オッズ比0.49,95%信頼区0.26-0.92) となり術前の1秒量が2.40 L以下で有意にCDⅡ以上の食道癌術後肺炎になりやすいことが示唆された.
結語
術前肺機能の1秒量はClavien-Dindo分類Ⅱ以上の食道癌術後肺炎のリスク因子であると考えられ,特に術前1秒量が2.40 L以下の症例に関しては,より強固な術前呼吸訓練が必要と考えられた.
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