演題

胸腔鏡下食道切除後食道裂孔ヘルニア発生の危険因子

[演者] 岩崎 寛智:1
[著者] 與田 幸恵:1, 能城 浩和:1
1:佐賀大学附属病院 一般・消化器外科

【はじめに】
食道癌は未だ予後不良な疾患の一つであるが,化学療法,放射線治療,手術技術など集学的治療の進歩に伴い術後の予後が延長している.そのため,患者のQOL維持のため,より慎重な術後合併症の管理が必要となっている.また,胸腔鏡手術の導入により従来の開胸手術と異なった合併症に留意する必要がある.内視鏡手術は癒着が少なく,開胸,開腹手術と比較し内ヘルニア発生率が高いことが知られている.術後食道裂孔ヘルニアは内ヘルニアの一つであり,食道癌術後の代表的な合併症であるが,胸腔鏡下食道切除術後の食道裂孔ヘルニア発生に対する危険因子の検討はほとんど報告がなく,今回その危険因子を後方視的に検討する.
【患者】
2009年4月から2015年12月までに当院で食道癌に対しる胸腔鏡下食道切除術を受けた患者113人を対象にした.手術は全て胸腔鏡手術(ロボット支援下手術を含む)で行われ,また腹腔操作は腹腔鏡手術にて行われた.術後食道裂孔ヘルニア予防として基本的に腹腔操作の際,再建臓器と横隔膜を非吸収糸3針にて固定を行なった.各因子で単変量解析を行い,P<0.30以下であったものを,更に多変量解析を行なった.
【結果】
113例中11例で術後食道裂孔ヘルニアの再発を認めた.主訴としては腹痛が最も多かったものの,無症状でフォローアップCTにて発見された症例も2例認めた.術後食道裂孔ヘルニア発症群および無発症群とで比較を行なったところ,患者背景として年齢,初回手術時のBMI,食道裂孔ヘルニアの有無,基礎疾患の有無,血清アルブミン値に有意な差は認めなかった.唯一,術前補助化学療法の有無で両群間に有意な差を認めた(p=0.031).また周術期の因子を両群間で比較したが,再建臓器,手術時間,出血量,術後合併症など,すべての因子で両群間に有意差を認めなかった.また驚くべきことに再建臓器と横隔膜の固定有無においても,両群間で有意差を認めなかった.多変量解析でも術前補助化学療法のみ独立した危険因子であった.
【結語】
術前補助化学療法が胸腔鏡下食道切除術後食道裂孔ヘルニア発生の唯一の危険因子であった.術前補助化学療法を施行された患者に対する食道切除術時には,さらなる予防策が必要であると考えられた.
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