演題

経皮的乳糜槽穿刺胸管塞栓を行った食道癌術後乳糜胸の一例. -食道癌術後難治性乳糜胸に対する新たな治療法-

[演者] 山澤 邦宏:1,2
[著者] 織畑 光一:1, 寺下 雄祐:1, 長谷川 智彦:1, 佐藤 兼俊:1, 村田 祐二郎:1, 奥田 純一:1, 津久井 元:1, 寺島 裕夫:1, 鈴木 丈夫:3
1:東京逓信病院 一般・消化器外科, 2:順天堂大学附属順天堂医院 消化器・低侵襲外科, 3:東京逓信病院 放射線科

【はじめに】
食道癌術後の乳糜胸は時として保存的治療では軽快せず,リピオドールによるリンパ管造影や手術的治療が行われることがあるが,それでも治療に抵抗する場合のある合併症である.
【症例】
61歳男性.術前診断,Mt-Ut, 0-IIc+I, cT1b(cSM2-3), cN0, cM0の食道癌に対し胸腔鏡・腹腔鏡下,食道切除・3領域郭清・胃管後縦隔経路頚部吻合を行った.この時,胸管は食道を横切る前後の部位でクリッピング切除している.術直後からの胸水量は200-700ml/dayを推移しておりやや多めの時もあったが,性状に問題はなく術後8日目に食事を開始した.食事を開始したところ胸水量が2000ml/dayへ上昇し,胸水検査も含め乳糜胸と診断.オクトレオチドの投与を開始したが,胸水量が減ることはなかった.そこでまず,MRIにて胸管・乳糜槽を描出し,乳糜漏出部位が胸管のクリッピングしたやや足側であったことを確認した.そして,乳糜胸治療目的に,術後16日目に右・20日目に左の鼠径穿刺法にてリピオドールによるリンパ管造影を行った.このリンパ管造影にて鼠径部から腹腔のリンパ管が造影,さらに乳糜槽・胸管が造影/描出され,乳糜の漏出部位も描出された.これにより一時500ml/dayまで乳糜胸水量は減少したが,再び1500-2400ml/dayへ上昇した.そのため,術後29日目にCTガイド下に経皮経肝的に乳糜槽を穿刺.乳糜槽より胸管へカニュレーションし,胸管をコイリングした後にNBCA+リピオドールにて塞栓を行ったところ,乳糜胸水は急激に減少・消失した.
【まとめ】
乳糜胸は食道癌術後の0.5-5%に発症する合併症であり,時として難治性乳糜胸となることがある.保存的治療では,オクトレオチドの投与,胸膜癒着,そしてリンパ管造影などがあり,保存的治療で効果がない場合外科的治療が選択され,開胸・開腹または胸腔鏡による胸管結紮が行われるが,侵襲はやや高く,手術でも治癒できなかった症例の報告も少なからずある.
今回の鼠径穿刺によるリンパ管造影は以前より行われている足背からのリンパ管造影に比べ簡便に行うことができた.また,胸管にカニュレーションし直接塞栓することにより,確実に胸管からの乳糜胸を治療することができた.リピオドールによるリンパ管造影や,今回行った新たな治療法としての胸管への塞栓術は難治性乳糜胸の治療法の一つとなりうると考えられた.その手技を中心に文献的考察を加え報告する.
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