演題

食道癌根治術後のリンパ漏-自験例10例に基づく検討-

[演者] 黒田 順士:1
[著者] 久倉 勝治:1, 小川 光一:1, 田村 孝史:1, 明石 義正:1, 大原 佑介:1, 榎本 剛史:1, 寺島 秀夫:1, 大河内 信弘:1
1:筑波大学附属病院 消化器外科

【緒言】食道癌術後リンパ漏は1.1~3.2%と報告されており,治療に難渋することがある.リンパ漏の原因は手術操作による胸管の損傷であり,難治症例では胸管結紮術が必要になる.当科での食道癌術後リンパ漏を呈した症例をまとめ検討する.
【対象・方法】2003年1月~2016年12月まで,当科で施行した食道癌根治術213例中,術後リンパ漏を呈した10例(4.7%)を対象とし,リンパ漏群10例と非リンパ漏群203例を周術期因子に関して比較検討した.
【結果】10例の内訳は,主占拠部位Ce/Ut/Mt/Lt:2/1/4/3例,治療前照射歴を6例 (60%)に認めた (非リンパ漏群17%).全例,右開胸による根治術が施行され,胸管温存がなされていた.2例で咽喉頭の合併切除が施行されていた.
リンパ漏の検討では,排液量最大値は中央値1060 (IQR:578-2353)ml/日で,最大量に達するまでの術後日数は中央値9 (IQR:6.25-12.25)日であった.術後在院日数は,リンパ漏群で中央値31.5 (IQR:27.25-46.25)日,非リンパ漏群で中央値17 (IQR:7-222)日と,有意に延長していた.10例中8例はソマトスタチンアナログ製剤などの既存の保存的治療で軽快したが,治療抵抗性であった1例は術後28病日に胸管結紮術を施行した.同症例は,術中所見で下行大動脈左背側を上行する左胸管の関与が示唆された.また,追加外科治療を拒否されたもう1例は胸膜癒着療法を追加施行し治癒を得た.
【まとめ】食道癌術後リンパ漏では,術前の放射線照射歴の有無がその発症に関与している可能性が示唆された.胸管は下行大動脈左背側にも存在することがあり,左胸管をもつ症例が1%の頻度で存在するとされている.また,横隔膜脚部を貫いた後に胸管へと合流する太いリンパ管が存在することが知られている.そのため,特に放射線照射歴のある症例では,そういったリンパ管の走行も念頭において,縦隔操作の際に丁寧な結紮やクリッピングを心掛ける必要があると考えられた.
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