演題

胸腔鏡下食道癌根治術後の頻脈性不整脈に対する塩酸ランジオロールの有用性

[演者] 加藤 礼:1
[著者] 村上 雅彦:1, 大塚 耕司:1, 五藤 哲:1, 有吉 朋丈:1, 山下 剛史:1, 古泉 友丈:1, 藤森 聰:1, 渡辺 誠:1, 青木 武士:1
1:昭和大学病院 消化器・一般外科

【背景】食道癌根治術後の頻脈性不整脈は,縫合不全や肺炎などの術後合併症に影響を与え,術後在院日数の増加を来す,重大な合併症の一つである.無症候性の場合でも,心負荷や末梢循環動態の観点から積極的に頻脈性不整脈に対し,加療することが推奨されている.
教室では食道癌に対し,胸腔鏡下食道亜全摘術を標準術式として,低侵襲化を計っているが,術後頻脈性不整脈のコントロールで苦慮することがしばしば認められる.2010年より術後塩酸ランジオロールを積極的に使用しており,その有用性について検討した.
【対象と方法】2010年1月から2014年12月までに,食道癌に対し胸腔鏡下食道亜全摘術施行した311例のうち,術後に頻脈性不整脈を発症した36例を対象とした.塩酸ランジオロールは全例投与しており,頻脈性不整脈を発症していない群をN群,頻脈性不整脈を発症し,塩酸ランジオロールを投与した群をA群とし,投与時バイタルサイン,投与後1時間後バイタルサイン,術後合併症,術後在院日数を後方視的に検討した.
【結果】塩酸ランジオロール投与前心拍数は141.4±22.0bpm,投与後1時間の心拍数は102.6±16bpmと有意に減少した(p<0.001).投与前収縮期血圧は124.1±23.5mmHg,投与前拡張期血圧は74.4±14.9mmHg,投与後1時間の収縮期血圧116.8±21.7mmHg,投与後1時間の拡張期血圧は71.5±13.1mmHgであり,投与前後で有意な減少は認められなかった.また,術後在院日数は,N群では18.6±10.6日,A群で23.1±15.1日であり,A群で増加傾向であったが有意差はなかった.縫合不全は,N群では5例(1.8%),A群で2例(5.6%)であり,A群で増加傾向がみられたが有意差はなかった.肺炎は,N群では15例(5.5%),A群で6例(16.7%)とA群で有意に増加した.
【考察】塩酸ランジオロールは,投与後に心拍数の有意な減少を認める一方,血圧変動に与える影響は少なく,臨床上有用と考えられた.頻脈性不整脈発症の有無では,術後在院日数,縫合不全に有意差は認められないものの増加傾向がみられ,術後肺炎発症例で有意に増加を認めた.肺炎の炎症が心房細動を惹起した可能性も考えられた.また,今回の検討では,他の抗不整脈薬との比較検討しておらず,他の薬剤との優劣に関しては言及できない.
【結語】胸腔鏡下食道亜全摘術周術期の頻脈性不整脈における塩酸ランジオロールの有用性が示唆された.
詳細検索