演題

副左肝動脈を有する食道切除胃管再建症例の検討

[演者] 真木 治文:1
[著者] 里舘 均:1, 佐藤 彰一:1, 長尾 厚樹:1, 渡辺 一輝:1, 奈良 智之:1, 古嶋 薫:1, 針原 康:1
1:NTT東日本関東病院 外科

【背景】6.0~22%の頻度で左肝動脈が左胃動脈から分岐する破格,すなわち副左肝動脈を認めるとされる.副左肝動脈を有する症例において,胃癌手術の際に左胃動脈を根部で切離すると肝梗塞及び肝機能障害を生じうることが報告されているが,食道切除胃管再建時における報告は少ない.
【患者と方法】当院における2005年1月から2016年12月の食道癌手術195例のうち,胃管再建を行った179例.そのうち術前CTで副左肝動脈を認めたのは16例(8.9%)だった.副左肝動脈を術中に切離した15例をA群,温存した1例を含むその他164例をB群として動脈の最大短径及び臨床所見,特に術後0, 1, 3, 7病日の血清AST, ALT値を後方視的に比較検討した.
【結果】副左肝もしくは左肝動脈の径は中央値(最小値-最大値)でA群2.3 mm (1.4-4.7),B群2.4 mm (1.3-4.4)と有意差を認めなかった.一方で左胃動脈の径はA群3.3 mm (2.1-5.7),B群2.5 mm (1.1-4.0)と有意にA群で大きかった(p<.0001).1病日のALT値はA群35 IU/L (12-515)対B群 24 IU/L (8-163) (p=0.0083),3病日のALT値はA群27 IU/L (12-295)対B群 19 IU/L (6-180) (p=0.019)と有意にA群の方が高かったが,7病日では有意差は認めなかった.A群のうち1例において術後,外側区域に限局した多発性の微小肝膿瘍および敗血症を生じ,集中治療室でDICに対する治療を要した.本症例は70歳男性で,上部食道を主座とする深達度T1a-MMの扁平上皮癌に対するESD後の追加切除だったため2領域郭清を行った.ROC曲線から副左肝動脈を有する可能性の高い左胃動脈の血管径のcutoff値を求めると2.9 mmだった(AUC=0.863, 95%信頼区間0.754-0.973).左胃動脈が2.9 mm以上の場合は13/37例(35%)に副左肝動脈を認めた.
【結論】左胃動脈の最大短径が2.9 mm以上の場合は35%の症例で副左肝動脈を認めた.副左肝動脈を切離した際には1, 3病日で有意な肝機能異常を呈したが7病日では差異を認めなかった.しかし術後,肝外側区域に限局する肝膿瘍及びDICを生じた1例を経験し,食道切除胃管再建時に副左肝動脈を温存することを考慮すべき症例もあることが示唆された.
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