演題

高齢食道癌患者における術前高齢者総合機能評価の有用性

[演者] 小田切 数基:1
[著者] 山崎 誠:1, 田中 晃司:1, 宮﨑 安弘:1, 牧野 知紀:1, 高橋 剛:1, 黒川 幸典:1, 瀧口 修司:1, 森 正樹:2, 土岐 祐一郎:1
1:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅱ, 2:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅰ

【はじめに】
近年,人口の高齢化が急速に進行しているとともに,外科治療が対象となる癌患者も高齢者の割合が多くなってきている.食道癌手術は侵襲の大きい手術の一つであるが,手術手技や周術期管理の向上により,高齢者に対しても安全に施行できるようになってきた.しかし高齢者は主要臓器の機能低下や並存疾患が認められることが多く,年齢だけでは測れないリスクを擁している.そこで,われわれは術前に高齢者総合機能評価(CGA:Comprehensive Geriatric Assessment)を行い,食道癌手術における短期成績との関連性を検討した.
【対象と方法】
当院で2009年12月から2015年7月に食道癌の診断で根治手術が行われた75歳以上の81例を対象とした.術前に老年・高血圧内科を受診しCGAを施行した.CGAの項目はMMSE(Mini-Mental State Examination:認知機能),GDS(Geriatric Depression Score:うつ状態),Vitality Index(VI:意欲),Barthel Index(BI:基本的ADL),IADL(Instrumental ADL:手段的ADL)の5項目を評価した.CGAの各項目と術後合併症の頻度,在院日数,退院時転帰との関連を検討した.
【結果】
平均年齢は78.2±2.7歳,男性:女性=68:13人,術後合併症の発現頻度は78%(63例/81例)で,肺炎:25%,せん妄:25%,心血管:19%,縫合不全:8.6%,SSI:7.4%であった.各合併症とCGAの関連を検討したところ,肺炎はGDSと有意な関連性を認め,せん妄はMMSEと有意な関連性を認めた.心血管,縫合不全,SSIなどの合併症とCGA項目は関連性を認めなかった.Grade 3以上の合併症の発現とGDSは有意な関連性を認めた.術後在院死は2例認め,いずれも76歳であったが1例はCGAのうち4項目で低下が見られ,もう1例ではGDSスコアが悪かった.術後在院日数はGDSと有意な相関が見られ,術後のリハビリ目的などで転院となる例はBI,GDSと関連性を認めた.BIとGDSを統合し高リスク群と低リスク群に分類し比較したところ,Grade3以上の合併症の発現率( 63.3%: 23.5%;p=0.0004),転院率(26.6%:5.9%;p=0.0094),術後在院日数( 49.0±2.3日: 36±2.3日;p=0.0191)で有意な関連性を認めた.
【結論】
高齢者の食道癌手術において術前CGA評価は,術後合併症のうち肺炎やせん妄や,重度の合併症の予測に有用であると考えられ,また術後退院時にリハビリを必要とする症例を予測する上でも有用である可能性が示唆された.
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