演題

当院における高齢者食道癌手術の治療に関する検討

[演者] 石田 洋樹:1
[著者] 竹内 裕也:1, 中村 理恵子:1, 須田 康一:1, 福田 和正:1, 和田 則仁:1, 川久保 博文:1, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科

【背景】近年の高齢化社会の到来に伴い,高齢食道癌患者が増加するとともに,周術期管理の進歩により手術適応が拡大している.しかし高齢者では各臓器の予備力の低下により術後合併症の発生率や死亡率が高率となることが懸念される.今回当院で施行した高齢者食道癌手術について検討を行った.
【方法】2012年から2016年に根治切除を施行した70歳以上の胸部食道癌62例について,後期高齢者(75歳以上)(20例,32%),前期高齢者(75歳未満)(42例,68%)の2群に分け,臨床病理学的因子,術後合併症等を比較検討した.
【結果】全症例の年齢中央値は73歳(70-85歳),男性52例(84%),女性10例(16%)であった.全例に対して胸部操作を含む食道癌根治術を施行した.術前化学療法施行は36例(58%)(FP療法 23例,DCF療法 13例),術前化学放射線療法(FP+RT)は2例(3%)に施行した.胸腔鏡下手術は43例(70%),開胸手術は19例(30%)に施行した.再建経路は後縦隔経路4例(87%),胸壁前経路8例(13%)であった.
腫瘍の占居部位は後期高齢者で胸部下部病変が有意に多く(11例(55%) vs 8例(19%)),胸部上部病変は有意に少なかった(0例(0%) vs 10例(23.8%))(p<0.01).術前ICG15分値は後期高齢者で有意に高かった(12.3% vs 5.7%, p=0.006).その他の術前因子に有意差を認めなかった.手術時間,出血量共に両群で差を認めなかった(526分 vs 531分,258ml vs 100ml )が,術後合併症は頻脈性不整脈が後期高齢者で有意に多く(25% vs 7%, p=0.050),術後肺炎,縫合不全が後期高齢者で少ない傾向を認め(20% vs 42% p=0.054, 5% vs 24%, p=0.070).反回神経麻痺は有意差を認めなかった(20.0% vs 40.5%, p=0.111).術後在院日数は有意差を認めなかった(中央値27日vs33日).
平均観察期間は12カ月(0-51カ月),OSの中央値は12.0カ月,DFSの中央値は11.5カ月で,予後には差を認めなかった.
【考察】後期高齢者では術前ICG15分値高値など術前リスクが高く,術後頻脈性不整脈の頻度が増加したが,重症合併症の頻度や在院日数は差を認めなかった.一方で腫瘍の局在に差を認め,後期高齢者での肺炎や縫合不全が少ない傾向にあったことから,より侵襲の大きい胸部上部病変の手術を避ける可能性や全身状態を考慮して手術が選択された可能性が示唆された.
【結論】後期高齢者に対する食道癌手術では,十分なリスク評価と合併症対策を講じることで,前期高齢者と同様に外科切除が可能である.
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