演題

巨大食道裂孔ヘルニアに対する胃前壁固定の有用性の検討

[演者] 東 重慶:1,2
[著者] 中島 清一:1,2, 宮崎 安弘:1, 牧野 知紀:1, 高橋 剛:1, 黒川 幸典:1, 山﨑 誠:1, 瀧口 修司:1, 森 正樹:3, 土岐 祐一郎:1
1:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅱ, 2:大阪大学次世代内視鏡治療学, 3:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅰ

【背景】本邦において巨大食道裂孔ヘルニアは合併症を持った高齢者に多く,待機手術であっても他の消化器手術と比較しても決してリスクの小さい手術とは言えない.食道裂孔ヘルニア手術においては原則的に噴門形成の付与が推奨されているが,長期間の脱出に伴う胃の変形によって,噴門形成が技術的に困難となる症例がしばしば見られる.主訴が通過障害で高齢者に多いという本病態の背景を鑑み,我々は噴門形成に固執しておらず,むしろ適切な裂孔の修復と還納臓器の再脱出・捻転の防止を最小限のリスクで行うべく,胃前壁固定の付与に重点を置いている.【方法】2006年以降に巨大食道裂孔ヘルニア(Type Ⅲ, Ⅳ)に対して,胃前壁固定を試みた8症例を噴門形成の有無で検討を行った.【手技】通常の5孔式腹腔鏡手術でヘルニア内容を経裂孔的に環納後,裂孔を結節縫合で修復し,必要に応じてメッシュ修復を行う.還納した胃の穹窿部を用いてカフの形成が可能な場合はshort & floppy Nissen噴門形成術を付与する.胃体中部前壁やや大弯に2点の固定部位を定める.2-0プロリン直針を体表から腹壁を貫通させ,腹腔内で目標の胃壁を拾い,再度腹壁を貫通させて腹直筋前鞘(皮下)にて結紮固定する.その後術中内視鏡にて胃の固定状況を確認する.【結果】患者は8症例とも女性で,噴門形成を付与したのは4症例であった.手術時年齢中央値は,年齢83歳(範囲 74-87歳)であり,全症例腹腔鏡下に手術を施行した.噴門形成を付与した群と付与しなかった群で,手術時間(267 vs 231 分 p=0.54),出血量(23 vs 30分 p=0.37)は両群で有意な差はなかった.術後follow up期間は中央値 29ヶ月 (範囲23-54ヶ月)であり,再発は両群とも認めていない.全症例で症状(通過障害)の緩和を認めたものの噴門形成を付与した2例に軽度の通過障害が残存し,噴門形成を付与しなかった1例において,術後逆流症状を訴えPPI内服を続けている患者がいるが,逆流の程度は臨床的に軽微で,内視鏡的にも逆流性食道炎のグレードAであった.【結語】巨大食道裂孔ヘルニアに対する噴門形成の付与について,我々は適切な判断を行うことが可能であった.また胃前壁固定術は比較的簡便な手技であり,ヘルニアの症状を緩和し,再発を予防できる有用な術式の一つと考えられた.
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