演題

当科で経験した特発性食道破裂12例の治療成績

[演者] 多田 武志:1
[著者] 佐瀬 善一郎:1, 金田 晃尚:1, 菊池 智宏:1, 楡井 東:1, 花山 寛之:1, 遠藤 久仁:1, 丸橋 繁:1, 河野 浩二:1
1:福島県立医科大学医学部

【目的】特発性食道破裂の治療法に関しては,一定の見解はなく,破裂の型や経過時間,および術者の経験等により様々である.当科で経験した特発性食道破裂症例を振り返り,治療成績について検討した.【対象と方法】1995年以降に当科で経験した特発性食道破裂12例を対象に,後方視的に検討した.【結果】年齢中央値は61歳(20~70歳),男性 10例,女性 2例であった.発症の誘因として,飲酒後の嘔吐が8例,非飲酒での嘔吐が3例,原因不明が1例であり,主訴は,胸痛が7例,腹痛が4例,吐血1例であった.CT検査で全例に縦隔気腫を認め,7例では左胸水を認めた.確定診断に至った検査は,食道造影が7例,内視鏡が2例,CTのみが2例,胸腔ドレナージが1例であった.穿孔形式は,胸腔内穿破型が3例,縦隔内限局型が9例であった.食道穿孔長径は中央値で2㎝(1~6㎝),部位は食道下部左側が9例であった.治療方法は,胸腔内穿破型3例では,左開胸ドレナージのみ,左開胸開腹食道直接縫合+大網被覆,経腹的直接縫合+胃底部縫着術をそれぞれ施行した.縦隔内限局型9例では,2例に保存的加療を,1例に左開胸開腹直接縫合+胃底部縫着術,6例に経腹的直接縫合+胃底部縫着術を施行した.診断がつかず他院で治療され,当科での治療介入が遅くなった初期の2例(8日目,7日目)を除く,手術を施行した8例においての手術開始までの時間中央値は9.5時間(4.5-48時間)であった.胸腔内穿破型で2例中2例に縫合不全を認め,1例には再手術(食道亜全摘+胃管再建)を施行していた.縦隔内限局型でも7例中2例に縫合不全を認めていたが,保存的に軽快した.在院死亡は認めなかった.【考察】本疾患の手術治療のポイントは穿孔部の確実な閉鎖であると考える.下部食道が穿孔好発部位という特徴および,胃底部逢着術を追加するために,当科では経腹的アプローチを基本術式としている.発症24時間以内であっても,食道直接縫合に胃底部縫着術を追加し,縫合不全のリスクを下げる工夫を行っている.視野不良症例や,胸腔内穿破型であっても,開胸を付加することで対応可能と考えている.しかし,縫合不全は少なからず発生しており,さらなる工夫が必要である.【結語】稀ではあるが,重篤で治療に難渋する疾患であるため,診断方法,治療方針,さらに手術手技を含め,全てを熟知しておくことが重要である.
詳細検索