演題

食道アカラシア患者の食道クリアランス率が症状と腹腔鏡下手術成績へ及ぼす影響

[演者] 坪井 一人:1
[著者] 小村 伸朗:2, 矢野 文章:3, 星野 真人:3, 山本 世怜:3, 秋元 俊亮:3, 増田 隆洋:3, 柏木 秀幸:1, 三森 教雄:3, 矢永 勝彦:3
1:富士市立中央病院 外科, 2:西埼玉中央病院 外科, 3:東京慈恵会医科大学 外科学講座

【背景と目的】食道アカラシア患者はつかえ感,嘔吐および胸痛などを典型症状とする代表的な一次性食道運動機能障害である.Timed barium esophagogram(TBE)検査は簡便な食道クリアランス評価法であり,教室では食道アカラシア患者の病態評価に活用してきた.一方,食道アカラシアに対する腹腔鏡下Heller-Dor手術(LHD)は現在標準術式として広く行われている.今回,食道アカラシア患者の術前食道クリアランス率の程度が症状とLHDの手術成績へ及ぼす影響を検討した.
【対象と方法】東京慈恵会医科大学附属病院およびその関連施設において1994年8月より2015年11月までに食道アカラシアに対して手術を施行した532例中,食道アカラシアに対する手術既往例,腹腔鏡アプローチ以外の手術症例,および術前TBE未施行例を除く369例(年齢13-83 [平均43.9]歳,男:女=188:181)を対象とした.TBEで得られたデータからバリウム服用x分後のバリウム柱の高さをバリウム高(Hx)と定義し,バリウム服用1分後(H1)から5分後(H5)のクリアランス率[ (1-H5/H1)×100% ]を算出した.その上で対象群をA群(術前クリアランス率10%未満),B群(50%未満),C群(50%以上)の3群に分けた.症状はつかえ感,嘔吐,胸痛および胸やけについて頻度と程度(ともに5段階評価)を手術前後に,手術満足度は術後3か月以上経過した時点で5段階(1:大いに不満,2:不満,3:まあまあ,4:満足,5:大満足)に評価した.手術前後の症状スコアと手術成績を群間比較した.統計学的手法はKrasukal-Wallis検定もしくはカイ二乗検定を用い,p値が0.05未満をもって有意差ありと定義した.
【結果】A群152例(41%),B群144例(39%),C群73例(20%)であった.術前症状はつかえ感の頻度と胸痛の程度において3群間で有意差を認め(各p=0.0387,p=0.0478),C群はA群に比較してつかえ感は軽度であり,逆に胸痛は高度であった(各p=0.0118,p=0.0205).術後の各症状スコア,手術成績および術後経過は3群間で差を認めず,手術による満足度は総じて高かった(A群:B群:C群=4.7:4.8:4.7,p=0.3786).
【結論】術前食道クリアランス率の程度は,術前のつかえ感と胸痛に関連したが,手術成績には影響を及ぼさなかった.
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