演題

造血幹細胞移植後に,ドナー骨髄細胞由来の食道扁平上皮癌を発症した一例

[演者] 小林 照之:1
[著者] 山崎 誠:1, 田中 晃司:1, 牧野 知紀:1, 宮崎 安弘:1, 高橋 剛:1, 黒川 幸典:1, 瀧口 修司:1, 森 正樹:2, 土岐 祐一郎:1
1:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅱ, 2:大阪大学大学院 消化器外科学Ⅰ

造血幹細胞移植後の2次性悪性腫瘍は,造血幹細胞移植後遅発性の合併症の1つである.今回,同種造血幹細胞移植後,約10年後に頸部食道癌を発症し,術後病理標本のFISH解析においてドナー由来の扁平上皮癌が観察された1例を経験したので報告する.症例は42歳男性,2000年10月に非ホジキンリンパ腫(末梢性T細胞型リンパ腫:PTCL-u)を発症し,化学療法抵抗性であり,2001年3月にHLA完全一致の実姉から同種末梢血幹細胞移植を受け,エトポシド大量療法,エンドキサン大量療法,全身放射線照射(12Gy)を施行し,完全寛解となったが,慢性GVHDが出現し免疫抑制剤による加療中であった.その後,2010年3月に嚥下困難感が出現し,かかりつけ医でCT精査にて頸部食道に壁肥厚を認め,上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に全周性3型病変を認めた(生検:扁平上皮癌).手術加療目的で当科紹介となり,精査の結果,食道癌Ce cT3N0M0 cStageⅡAの治療前診断であった.免疫抑制剤使用に伴う腎不全があったため,手術の方針となった.全身麻酔下・仰臥位にて手術を施行した.腫瘍の周囲組織への浸潤はみられず喉頭温存は可能と判断し,頚部食道切除(頸部リンパ節郭清),遊離空腸再建を施行した(手術時間:395分,出血量:1400ml).術後病理標本では,肉眼的に全周性の2型病変を認め,病理組織診にて一部低分化を含む中分化型扁平上皮癌(pT3, pN0, INFb, ly1, v0, pIM0, pPM0, pDM0)の診断であった.さらに,FISH解析において腫瘍細胞の性染色体をチェックしたところ,腫瘍部はドナー由来のXX染色体,周辺部はXX染色体とXY染色体の混合であることが分かり,本症例において食道扁平上皮癌がドナーの骨髄由来細胞から生じていることが示された.術後経過は経過良好であり術後47日目に退院となった.退院後,約1年後に胸膜播種に伴う胸水貯留が出現し,術後化学療法を施行するも増悪傾向を認め,退院後約1年8ヵ月で永眠された.造血幹細胞移植後の2次性悪性腫瘍において,扁平上皮癌のリスク因子として慢性GVHDが挙げられているが,本症例のようにドナーの骨髄由来細胞自体が癌化する可能性が示唆された.本症例に関して,若干の文献的考察を踏まえて報告する.
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