演題

Zenker憩室内粘膜癌と胸部中部食道進行癌が同時多発した1切除例

[演者] 數野 暁人:1
[著者] 小熊 潤也:1, 新田 美穂:1, 二宮 大和:1, 中郡 聡夫:1, 貞廣 荘太郎:1, 小澤 壯治:1
1:東海大学付属病院 消化器外科

はじめに:Zenker憩室は古くから癌化することが知られ,慢性的な食物残渣の貯留が癌化に関連があると考えられている.癌発生率はZenker憩室の0.3~7%とまれである.今回われわれは胸部中部食道の2型進行癌とZenker憩室内にみられた0-Ⅱb型粘膜癌が同時多発し,術前補助化学療法後に胸部食道全摘術とZenker憩室切除を同時に施行した1例を経験したので報告する.
症例:70歳,女性.主訴:つかえ感,嘔吐.現病歴:2か月前より主訴を自覚したため,近医を受診したところ食道癌を指摘され,治療目的に当院を紹介受診となった.喫煙歴:なし.飲酒歴:ビール500ml/日を40年.上部消化管造影検査:食道入口部の左側壁に29×20mm大のZenker憩室と,憩室内の粘膜不整,胸部中部から下部食道に長径76mm大の腫瘤をみとめた.上部消化管内視鏡検査:食道入口部直下の左壁に憩室をみとめ,憩室内の一部はヨード不染色であった.上切歯列より29~38cmに全周性の2型病変をみとめた.CT:胸部中部~下部食道の壁肥厚と,106recLと3リンパ節が腫大していた.経過:食道癌①MtLt,2型,cT3cN2cM0,cStageⅢ,②Ce,0-Ⅱc,T1a,cN0,cM0,cStage0の診断で術前補助化学療法(CDDP/5-FU x 2コース)を施行し,効果判定はCRであった.化学療法終了後42日目に,胸腔鏡下胸部食道全摘術,3領域リンパ節郭清,胸骨後経路胃管再建,Zenker憩室切除術を施行した.病理では原発巣はGrade3,7リンパ節に扁平上皮癌の転移をみとめた.術後経過は順調で,第24病日に軽快退院し,術後2か月の現在無再発生存中である.
考察:本症例ではZenker憩室内癌は粘膜癌であったため,頸部食道切除は必要でなく憩室切除術で十分と考えた.Zenker憩室切除と胸部食道全摘を同時に施行する場合には,頸部食道胃管吻合部とZenker憩室切除後の縫合閉鎖部が近いため創傷治癒の観点から不利となる.そこでZenker憩室切除の際に,憩室と反対側の食道の剥離授動を必要以上に行わず血流不全に陥らないように工夫した.
結語:Zenker憩室内癌を併存した胸部食道癌の手術には,憩室切除時の食道狭窄の回避に加えて,食道胃管吻合部の縫合不全の予防に留意した術式が望ましいと考えられた.
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