演題

局所進行直腸癌に対するFOLFOXを用いた周術期化学療法の安全性と有用性

[演者] 中川 和也:1
[著者] 大田 貢由:1, 諏訪 宏和:1, 諏訪 雄亮:2, 樅山 将士:2, 石部 敦士:2, 渡邉 純:3, 國崎 主税:1, 遠藤 格:2
1:横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター, 2:横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科学, 3:横須賀共済病院 外科

【背景】局所進行直腸癌に対する治療戦略は本邦と欧米で異なっているが,JCOG0212の結果から,局所コントロールには一定の効果があるが 生存率の改善には余り寄与しないという点で同じ問題点を抱えているといえる.そこで主に生存率改善のための,補助化学療法を組み入れた新しい治療戦略の構築が求められている.
【目的】局所進行直腸癌に対するFOLFOXを用いた周術期化学療法の安全性と有用性について検討する.
【対象と方法】臨床病期StageIIIの直腸癌で,術前・術後にFOLFOXをそれぞれ6コース行い,原発巣切除と側方郭清を含めたD3郭清を施行した(N群).術前化学療法導入前のStageIII直腸癌134例中,側方郭清を施行した50例(S群)とN群を比較検討した.
【結果】2011年から2016年6月までの期間にN群は46例であった.術前化学療法の完遂率は97.8%(45例)であった.原発巣は化学療法開始前50mmで,化学療法後には35mmと縮小し,縮小率中央値は30.8%であった.括約筋温存手術はN群78.3%,S群68.0%に施行され,差は認めなかった.側方郭清を含めた腹腔鏡下手術はN群82.6%,S群22.0%とN群で有意に高率に施行されていた.手術時間中央値はN群372分,S群328分とN群で長く(p=0.02),出血量はN群113ml,S群500mlとN群で少なかった(p=0.03).
R0切除率はN群95.7%,S群98.0%と差を認めなかった.肛門側切離端中央値はN群29mm,S群23mmとN群で長かった.側方リンパ節転移陽性率はN群7.9%(3/38例),S群26.0%(13/50例)と差を認めた.N群でGrade2以上の組織学的効果を認めた症例は17.4%(8例)で,1例でGrade3を認めた.
縫合不全をN群10.9%,S群12.0%に認め,差を認めなかった.内服治療を必要とした排尿障害はN群21.7%,S群10.0%に認めた.
生存者の観察期間中央値はN群20.8か月(5.6-46.9か月)であった.N群では23.9%(11例)に再発を認め,再発部位は肺9例で最も多く,局所5例,肝3例であった.局所のみは1例であった.S群では36.0%(18例)に再発を認め,肺7例,肝4例,局所4例,その他7例であった.1年,3年無再発生存率はそれぞれN群78.0%,73.9%で,S群89.9%,63.6%で差は認めなかった.
【結語】術前化学療法を行うことで約30%の原発巣縮小が得られ,十分なCRMを確保しながら側方郭清を含めた拡大郭清を安全に行うことができた.局所進行直腸癌に対する周術期化学療法を併用した治療戦略は,新しい世界標準治療になる可能性がある.
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