演題

術前3D-CTで血管変異を把握することは,腹腔鏡下胃癌手術におけるリンパ節郭清に有用である

[演者] 森山 大樹:1,2
[著者] 永井 英司:1, 大内田 研宙:1, 進藤 幸治:1, 永井 俊太郎:1, 宮坂 義浩:1, 真鍋 達也:1, 大塚 隆生:1, 清水 周次:2, 中村 雅史:1
1:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学, 2:九州大学病院 国際医療部

胃癌手術における膵上縁リンパ節郭清の際に,しばしば血管の解剖学的変異に遭遇する.左胃動脈から左肝動脈が分岐しているケースや,上腸間膜動脈から右肝動脈が分岐しているケースなどである.これらの変異に気づかずに手術を行うと,リンパ節郭清の際に思わぬ出血の原因となりうるだけでなく,切離による術後肝機能障害のリスクも生じる.
最近,当科では3D-CTによる術前シミュレーションを行っており,それによってあらかじめ血管走行の変異を容易に認識できるようになった.今回,血管変異パターンがリンパ節郭清手技に与える影響について検討した.
2015年2月から2016年5月までに施行した腹腔鏡下胃癌手術110例のうち,術前3D-CTシミュレーションで評価可能であった78例(70.9%)について検討した.このうち15例(19.2%)に置換左肝動脈,7例(9.0%)に置換右肝動脈が存在し,これらは全例で手術中にも同様の所見が確認できた.なお,置換右肝動脈存在例7例全例において,置換左肝動脈が存在していた.
置換左肝動脈例15例のうち7例で胃全摘,7例で幽門側胃切除を行い,リンパ節郭清は5例でD1+,9例でD2郭清を行った.このうち,#7リンパ節転移が疑われた進行癌3例を除く12例 で,この左肝動脈を計画的に温存してリンパ節郭清を行った.また,左肝動脈を合併切離した3例では,いずれも術前に中肝動脈の存在を確認していた.これら3例はいずれも術翌日に血清AST, ALTの一過性上昇(AST 552-1136 U/L, ALT 333 -995U/L)を認めたが,術後1週間で著明に改善した(AST 23-81 U/L, ALT 48-154 U/L).
一方,置換右肝動脈については,6例が上腸間膜動脈,1例が腹腔動脈を起始部として走行していた.これらは総肝動脈が欠落しているものの,いずれも胃十二指腸動脈が腹腔動脈を起始部として走行していたため,その神経束外側に沿ってリンパ節郭清を行うことで,通常の手技とほぼ変わりなく手術を行うことができ,通常と比べても術中のトラブルや手術時間延長や出血量増加は認めなかった.
術前3D-CTで血管の変異を確認することで術前に十分なシミュレーションを行うことができるため,手術をより安全かつ計画的に施行できると考えられた.
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