演題

RAS遺伝子変異と大腸癌腫瘍先進部における病理組織学的所見との関連についての検討

[演者] 米村 圭介:1
[著者] 梶原 由規:1, 神藤 英二:1, 望月 早月:1, 末山 貴浩:1, 渡邉 智記:1, 山寺 勝人:1, 阿尾 理一:1, 山本 順司:1, 上野 秀樹:1
1:防衛医科大学校医学部 外科学

【背景】当科では大腸癌腫瘍先進部に特異的に発現する簇出や低分化胞巣(腺管構造を有しない5個以上の癌細胞からなる胞巣:PDC)等の浸潤形態に着目し,これらがリンパ節転移や予後の予測因子として有用であることを報告してきた.近年,進行再発大腸癌における抗EGFR薬の効果予測にRAS遺伝子検索が広く用いられており,RAS遺伝子変異の有無が,腫瘍の形態学的特徴と関連しているとの海外の報告もある.
【目的】大腸癌におけるRAS遺伝子変異と臨床病理学的所見(特に,腫瘍先進部の浸潤形態)との関連について検討を行った.
【対象と方法】2008年7月から2015年12月までの間に原発巣切除を施行し,RAS遺伝子検査を実施した進行再発大腸癌107症例(Stage IV 85例,再発 22例;男性71例,女性36例;平均年齢63.6±12.2歳)を対象とした.PDCは既報の方法(Am J Surg Pathol 2012(36); 193-201)に則り,最も高密度な部位を対物20倍視野で観察し,PDCの個数が5個未満/5-9個/10個以上をそれぞれG1PDC/G2PDC/G3PDCと判定した.簇出は大腸癌取扱い規約(第8版)の定義に従いG1/G2/G3に分類した.
【結果】RAS遺伝子変異は107例中46例(43.0 %)に認められた.RAS遺伝子変異と性別,年齢,腫瘍占居部位,Stage IV/再発の別に有意な相関は認めなかった.また,RAS遺伝子変異率は壁深達度別にpT3 (22例):pT4(24例) = 47.8%:52.2%,リンパ節転移別にはpN0(9例):pN1(17例):pN2(14例):pN3(6例) = 19.6%:37.0%:30.4%:13.0%といずれも有意な相関を認めなかった.一方腫瘍形態との関連について,主組織型別のRAS遺伝子変異率(tub1 (11例):tub2 (29例):por (6例) = 23.9%:63.0%:13.0%)には,有意差を認めないものの,腫瘍先進部におけるPDC(G1PDC (5例):G2PDC (17例):G3PDC (24例) = 10.9%:37.0%:52.2%,p = 0.0088) とgradeの上昇と共にRAS変異率が高率となった.この傾向は簇出においても同様であった(G1 (6例):G2 (16例):G3 (24例) = 13.0%:34.8%:52.2%,p = 0.045).
【結語】RAS遺伝子変異率は簇出や低分化胞巣のgradeと関連性を認めた.RAS遺伝子の変異が先進部における微小癌胞巣の形成に何らかの関与を及ぼしている可能性が示唆された.
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