演題

大腸癌組織特異的DNAメチル化の網羅的解析 ―ZNF625メチル化の大腸癌における臨床病理学的意義―

[演者] 長野 由佳:1
[著者] 問山 裕二:1, 奥川 喜永:1, 沖上 正人:1, 藤川 裕之:1, 廣 純一郎:1, 小林 美奈子:2, 井上 靖浩:1, 毛利 靖彦:1, 楠 正人:1,2
1:三重大学大学院 消化管・小児外科学, 2:三重大学大学院 先端的外科技術開発学

<背景> 塩基配列変化を伴わない,細胞分裂後も継承される遺伝子機能変化,いわゆるEpigeneticsの異常は,さまざまな癌種において深く病態に関連していることが明らかとなってきている.Epigenetics遺伝子制御の一つであるメチル化DNAは,その遺伝性および安定した性質のため, 多くの癌種で有用なバイオマーカーとして報告されている.とくにDNAプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化異常は,重要なEpigenetics遺伝子発現制御機構の一つであり,大腸癌発癌および癌進展に関与していることが解明されてきている.そこで今回,大腸癌患者の診断の一助となりうるあらたなDNAメチル化マーカーを同定することを目的として,大腸癌組織および正常大腸粘膜を用いて全ゲノムメチル化解析を行い,候補マーカーのメチル化レベルと臨床病理学的因子との関連について検討を行った.
<対象と方法> Discovery phaseとして,大腸癌特異的なメチル化CpG siteを同定するため, 14例の大腸癌患者並びに健常者から採取した大腸癌組織・正常大腸粘膜を用いて,全ゲノムメチル化解析を行った.ここから得られた結果を検証するためにValidation phaseとして,大腸癌57例の大腸癌組織および周囲正常粘膜から抽出・生成したBisulfited DNAを用いて, Pyrosequencerでそのメチル化レベルを定量的に評価し,臨床病理学的因子との関連を検討した.
<結果> Discovery phaseでは,正常大腸粘膜と比較して,大腸癌組織におけるZNF625プロモーター領域のCpG siteは高メチル化を呈し,候補マーカーのひとつとして考えられた.57例の大腸癌組織および正常粘膜組織でZNF625のメチル化レベルを定量的に評価したところ,ZNF625は正常粘膜と比較し,大腸癌組織において有意に高メチル化されていた(p <0.0001).さらにROC曲線分析では,AUC:0.87,Sensitivity:75.9%,Specificity:94.7% であり, ZNF625高メチル化は大腸癌組織特異的である可能性が示された.なお,大腸癌組織におけるZNF625のメチル化レベルは,男性で有意に高く(p=0.04),脈管侵襲陽性患者で上昇傾向を示した(p=0.05)が,その他の臨床病理学的因子とは明らかな関連を認めなかった.
<結論> 大腸癌組織におけるZNF625のメチル化レベルは,正常粘膜に比べて有意に高く,大腸癌組織においてZNF625のメチル化レベルを測定することは,大腸癌患者診断の有用な診断マーカーになりうる可能性が示唆された.
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