演題

大腸癌組織特異的メチル化DNAの網羅的解析

[演者] 沖 哲:1
[著者] 問山 裕二:1, 奥川 喜永:1, 廣 純一郎:1, 吉山 繁幸:1, 大井 正貴:1, 荒木 俊光:1, 井上 靖浩:1, 毛利 靖彦:1, 楠 正人:1
1:三重大学大学院 消化管・小児外科学

<背景>近年,大腸癌を含む癌治療における診断・予測バイオマーカーの開発・発展は著しく,mRNAやタンパクなどのさまざまな標的分子を利用したバイオマーカーの有用性が多数報告されている.しかしながら,臨床応用という観点では,いまだその進捗に乏しい.一方,GeneticsやEpigeneticsを用いたバイオマーカーは,その有用性が確認されており,特にDNAメチル化は,実臨床で使用されつつ現状にある.今回我々は大腸癌患者の癌組織および正常大腸粘膜を用いて,全ゲノムメチル化解析を行い,DNAメチル化を用いた新たな診断マーカーを探索した.
<対象と方法>Discovery phaseとして,大腸癌に特異的なメチル化CpG siteを同定するため, 14例の大腸癌患者並びに健常者から採取した大腸癌組織・正常大腸粘膜を用いて,全ゲノムメチル化解析を行った.Validation phaseとして,大腸癌51例の大腸癌組織および周囲正常粘膜から抽出したDNAから, Pyrosequencing法を用いて同定されたメチル化レベルを定量的に評価し,臨床病理学的因子との関連を検討した.
<結果>Discovery phaseにおいて,正常大腸粘膜と比して,有意なメチル化異常を呈したCpG siteの中から,Hyperethylationを癌組織で認めたSSBP4とHypomethylationを呈したMATN4のに着目して多数サンプルでの評価を行った.51例の大腸癌患者における癌組織と周囲正常粘膜でSSBP4,MATN4のメチル化レベルを定量的に測定・比較したところ,癌組織においてSSBP4では高メチル化(P<0.0001),MATN4では低メチル化(P<0.0001)をみとめた.ROC曲線解析では,SSBP4ではAUC:0.89,感度:81.1%,特異度:94.3%,MATN4ではAUC:0.95,感度:84.3%,特異度:98.0%を示し,それぞれの高メチル化,低メチル化が大腸癌組織特異的なメチル化異常である可能性が示された.またSSBP4とMATN4を組み合わせて用いることにより,AUC:0.98,感度:94.1%,特異度:98.0%で大腸癌を診断することが可能であった,臨床病理学的因子との検討では,S状結腸癌が,上行結腸癌,横行結腸癌,直腸癌と比較してMATN4の有意な低メチル化をみとめた(P=0.0041).またMATN4は遠隔転移症例で低メチル化する傾向があった.
<結語>SSBP4およびMATN4のメチル化状態を評価することは,結腸直腸癌患者の診断バイオマーカーとして有用である可能性が示唆された.
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