演題

大腸癌における新規ドライバー遺伝子BZW2発現の臨床的,生物学的意義

[演者] 林 直樹:1,2
[著者] 増田 隆明:1, 胡 慶江:1, 木戸上 真也:1, 南原 翔:1, 黒田 陽介:1, 伊藤 修平:1, 江口 英利:1, 夏越 祥次:2, 三森 功士:1
1:九州大学病院別府病院 外科, 2:鹿児島大学大学院 消化器・乳腺甲状腺外科学

【背景】我々は大腸がん進化の早期の遺伝子変異として7番染色体短腕のコピー数の増加を認めること(PLOS Genetics 2016),その7番染色体短腕に存在する大腸がんドライバー遺伝子候補としてBasic Leucine Zipper and W2 Domains 2 (BZW2)を報告した(第71回日本消化器外科学会学術集会).BZW2は翻訳開始点の制御を担う遺伝子の一つである.
【目的】大腸がんにおける新規ドライバー遺伝子候補BZW2発現の臨床的及び生物学的意義を明らかにする.
【対象と方法】1)当科が所有する大腸癌切除112症例を用いて,定量RT-PCR法によりBZW2および内部コントロールGAPDHの発現量を定量し,臨床病理学的因子および予後との関連を検討した.2)GSEA解析によりBZW2と正の発現パターンを示す遺伝子群を同定した.3)ノックダウンによるBZW2の発現抑制により,2)で同定された下流遺伝子の発現の変化(Western blotting法(WB法))及び,増殖能の変化(colony formation assay)を検討した.4)BZW2の過剰発現大腸癌細胞株(RCT116)を樹立し,3)同様に下流遺伝子の発現の変化(WB法)及び,増殖能,造腫瘍能の変化(MTT assay,ヌードマウス皮下移植モデル,sphere formation assay)を評価した.また,cell cycle assayにより,BZW2過剰発現による細胞周期の変化を検討した.
【結果】 1)BZW2高発現症例(cut off:中央値)は年齢,性別,分化度,深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲に相関を認めなかったが,肝転移が有意に多く(χ2乗検定:p<0.05),また予後不良であった(Kaplan-Mayer法, Log rank test:p0.05).2)BZW2発現とc-Mycの下流遺伝子群の発現との間に正の相関を認めた(NES=2.1, P=0.0, FDR=0.003).3)BZW2発現抑制によりc-Myc蛋白の発現は低下し,コロニー数が減少した.4)BZW2過剰発現によりc-Myc蛋白の発現は上昇し,In vitroにおける細胞増殖能の亢進およびマウス皮下腫瘍の増大を認め,sphere formation assayではコロニー形成数の増加を認めた(t検定:p<0.05).また,cell cycle assayにおいて強制発現株ではコントロールに比してS期細胞が有意に多く(t検定:p<0.001),またpCDK2 (Tyr)蛋白のリン酸化が低下した.
【考察】BZW2は癌遺伝子c-Mycの蛋白発現亢進を介して細胞周期の進行を促進し,増殖能を上昇させている可能性が示唆された.またBZW2は大腸癌組織でDNA copy数の増加により高発現し,その結果悪性度に関与することから治療標的分子として期待される.
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