演題

腹腔鏡下肝切除術:Evolution and Revolution

[演者] 金子 弘真:1
1:東邦大学

近年の肝臓領域における低侵襲性手術は普及され,最小限の創で最大限の治療効果をもたらすための努力と工夫から, 開腹術との比較において低侵襲そのもの強調するより,出血量の減少,術後合併症軽減や在院期間短縮さらには非劣性 の肝がん,転移性肝がんの長期成績の報告も増えてきている.そして,腹腔鏡下肝切除の適応は画像の進歩,手術手技 の修練や手術機材の改良などに徐々に拡大されてきた.しかし,一方で腹腔鏡下肝切除の無理な適応拡大から不幸な結 果を招いた事例が倫理上の管理も含めて社会問題となった.腹腔鏡下肝切除では通常の開腹手術に比べ難易度は高く, その手技の習得により多くの時間を要する.症例ごとに外科医自身の手術技量を考慮して,より慎重に適応を検討する ことも重要である.さら本術式には強くラーニングカーブが関与するため,適切な指導のもと教育も極めて重要とな り,教育セミナーも定期的に開かれている.最近では多施設共同研究による大規模な傾向スコア分析も行われ,より高 いエビデンスの獲得へ向けて努力がなされている.2015年10月より肝臓内視鏡外科研究会では腹腔鏡下肝切除術の全症 例の前向きレジストリーを開始した.2016年4月には,肝亜区域切除術,区域切除術,肝葉切除術のすべての術式が保 険収載された.現時点で前向きレジストリーの結果は全症例の90日以内の死亡率0.22%,肝亜区域切除術,区域切除 術,肝葉切除術だけでは1.06%であった.今後これらの取り組みから患者への安全性を担保し,新しい術式に対する社 会への透明性を上げ,公正で幅広いデータを蓄積し,術式に対する理解を深めてもらうことで,腹腔鏡下肝切除の正し い評価と安心・安全な普及を望んでいる.そして,腹腔鏡下に術者の手となる手術機器のさらなる改良と適切な使用及 び術野展開を工夫して,手術手技を研磨することにより,腹腔鏡下肝切除が安全かつ低侵襲で根治性を損なわずQOLに も貢献できる,新たな術式となるものと考えている.
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