演題

SY14-10

エビデンスと経験に基づく膵断端空腸吻合

[演者] 岡田 健一:1
[著者] 川井 学:1, 廣野 誠子:1, 宮澤 基樹:1, 清水 敦史:1, 北畑 裕司:1, 上野 昌樹:1, 速水 晋也:1, 山上 裕機:1
1:和歌山県立医科大学医学部 外科学第二教室

膵頭十二指腸切除術において,当院で施行した膵管ステントに関するRCTにおいて,ISGPF基準に基づく膵液瘻発生率に有意差を認めなかった(外瘻20%vs内瘻26%)(Am J Surg. 2010).現在は内瘻化チューブを用いて膵管空腸粘膜全層縫合で膵空腸吻合を行っている.手技:膵切離では残膵の背側に切り込まないように注意して,切離面がやや前方を向く程度にしている.主膵管を確認してメスを一時止めることなく,背面まで一刀両断に切る.主膵管が確認できたら,5Frの節付き膵管チューブを一時挿入し,膵液流出の確認をするとともに膵断端止血操作が主膵管に及ばないよう予防する.膵上縁・下縁を横走する横行膵動脈は5-0非吸収糸で刺通結紮し止血するが,特に主膵管周囲の断端に多数の実質刺通結紮を行うことは避ける.膵断端の刺通結紮は,atraumaticに運針し,断器で膵実質を傷つけないようにする.膵実質空腸漿膜筋層密着吻合に関しては,膵実質と空腸の漿膜筋層を4-0 のナイロン糸を4~5 針かけ,結紮せず置いておく.次に膵管空腸粘膜全層縫合では,5-0の吸収糸で膵管と空腸全層を8 針縫合する.この際膵管は粘膜だけを縫合するのではなく,膵実質も含めて針を掛けるようにしている.後壁の縫合を終了した後,節付き5Frの膵管チューブをロストステントとして挿入,後壁の縫合糸による固定は行わない.最後に,結紮点が腸側にのるように膵腸吻合を終了する.
膵体尾部切除術においては,膵切離部位の膵実質厚が12mm以上の症例では有意に膵液瘻発生率が高率であった(Am J Surg 2013).腹腔動脈合併膵体尾部切除術後にIsolated Roux-en-Y様式で頭側膵断端空腸吻合(膵管空腸粘膜全層縫合)を前向きに施行すると,自動縫合器施行症例に比し,術後のドレーン排液アミラーゼ値の異常高値を減少し,膵空腸吻合が膵液瘻発生率を減少させる可能性が示唆された(J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2014).多施設共同のRCTによって尾側膵切除術に対する膵断端空腸吻合群と自動縫合器群の膵液瘻発生率を検証すると,膵腸吻合の優越性は証明できなかったが,膵切離部の実質厚が12㎜以上の症例では,膵空腸吻合群で臨床的に有意な膵液瘻発生率が少ない傾向を認めた(Ann Surg. 2016).尾側膵切除においても膵空腸吻合を行う場合は膵頭十二指腸切除時と同様に施行している.ただし,ロストステントの十二指腸側への迷入を防ぐ目的で,no stentで施行している.
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