演題

PO6-2

抗Ge抗体保有患者に対し自己血輸血により同種血輸血を回避した肝中央二区域切除術の一例

[演者] 井上 真岐:1
[著者] 安村 拓人:1, 海江田 衛:1, 菰方 輝夫:1
1:鹿児島医療センター 外科

【はじめに】発現頻度が99%以上の血液型抗原を高頻度抗原と呼び,その抗体を保有する
患者が輸血を必要とする場合,適合血の確保に苦慮することが多い.今回,高頻度抗原に対する抗体の1つである非常に稀な抗Ge抗体保有患者に対し,貯血式および希釈式自己血輸血を用いて同種血輸血を回避した肝中央二区域切除術の一例を経験したので報告する.
【症例】輸血歴のない76歳,女性. 慢性C型肝炎の既往があり,左室拡張不全を伴う中等度大動脈弁狭窄症で近医通院中であった.検診の腹部エコーで肝S4-8に80mm大の腫瘤を指摘され当院へ紹介となった.肝細胞癌の診断で手術(肝中央二区域切除)の方針となったが,術前の不規則抗体スクリーニングで陽性を示し,追精査で抗Ge抗体が同定された.国内に冷凍保存製剤がなく,抗Ge抗体陰性の献血者登録もなく適合血の確保が困難であった. 臨床例の報告がほとんどなく,不適合輸血による溶血反応の発症頻度,重症度およびその他の有害事象は予測困難であった.院内安全管理委員会での協議を経て自己血輸血での対応で手術の方針とした.術前に800mlの自己血を貯血し,さらに麻酔導入後に希釈式自己血を700ml採血した.前区域動脈枝および内側区域グリソンを先行処理後,Pringleおよび肝下部IVCクランプ下に, THUNDERBEAT, CUSA, ソフト凝固を用いて肝切離を行った.途中,中肝静脈背側を損傷したため,手指圧迫止血しながら, 主たる脈管(G5, G8, MHV)のみ結紮し, ほぼTHUNDERBEAT単独にて肝切離を完了した.術中推定出血量は1300mlで,貯血式および希釈式自己血輸血のみで終了した.念のために準備していた回収式自己血輸血は使用しなかった.手術時間4時間20分, 肝実質切離時間48分, 切除肝重量375g, sm(-)であった. 術後一過性の心不全を合併した以外経過良好で, 術後第18病日に自宅退院した.
【まとめ】非常に稀な抗Ge抗体保有患者の肝切除例を経験した.適合血入手困難例に対し,同種血輸血の回避手段として, 貯血式プラス希釈式自己血輸血が有効であった.危機的出血時の対応に備え,麻酔科・検査科・臨床工学部を含めた多部門との連携が不可欠であり, さらにTHUNDERBEATの肝実質切離デバイスとしての有用性・実効性が示唆された.
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