演題

PO6-1

左肝動脈破格を伴う肝癌に対する腹腔鏡下肝左葉切除術

[演者] 尾上 隆司:1
[著者] 伊禮 俊充:1, 井上 雅史:1, 首藤 毅:1, 三隅 俊博:1, 清水 亘:1, 鈴木 崇久:1, 清水 洋祐:1, 檜井 孝夫:1, 田代 裕尊:1
1:呉医療センター・中国がんセンター 外科

腹腔鏡下肝切除術は平成28年より肝部分切除,肝外側区域切除以外についても腹腔鏡下肝切除の多くの術式が保険収載された.これにより手術の増加が予想されるが,一方で安全性の担保が必要である.肝臓は脈管の破格が多く,安全に手術を行うために,術前の解剖把握および術中の評価が特に重要である.今回われわれは,肝動脈破格を伴う多発肝癌に対し,肝動脈血行遮断とドップラーエコーによる術中肝動脈同定法を用い,安全に腹腔鏡下左葉切除術を施行しえた症例を経験したので報告する.
【症例】76歳男性.HCVに対し,DAAの2剤併用療法後,SVRとなりフォロー中にエコーにて肝内腫瘤を認めた.精査にて肝S2,S3,S4にそれぞれ1cm大の腫瘤を認め,多発HCCと診断され,外科的治療目的に当科紹介.S2およびS4の腫瘤はそれぞれ左肝静脈および中肝静脈の近傍にあり,ICG15分値3%と肝予備能も良好であったことから,肝左葉切除の適応と思われた.ご本人と相談した上,腹腔鏡下肝左葉切除術の方針となった.画像上,総肝動脈が小網内を上行し,左肝動脈を分岐した後,尾側へ下降し,胃十二指腸動脈,右肝動脈を分岐する破格を認めた.
【手術】術前にVINCENTでの3D構築を用い,動脈走行を確認した.手術は左半側臥位,5ポートで開始した.肝左葉の授動および胆嚢摘出を行った後,肝十二指腸靭帯にテーピングし,Pringleの準備を行った.小網を開放し,小網内を走行する動脈を認めこれをテーピングした.ブルドックで阻血後ドップラーエコーを行い,肝両葉の動脈阻血を確認,総肝動脈であることを確認した.さらに動脈末梢をisolationし,最初の分枝をテーピングし,同様に阻血後ドップラーエコーを行い,左葉のみの動脈阻血を確認,左肝動脈であることを確認した.右肝動脈の損傷を防ぐため,左肝動脈とそれ以外のグリソンを個別処理することとし,それぞれクリッピング後切離および自動吻合器により切離した.アランチウス管を処理後,阻血ラインに沿い,中肝静脈を露出するように定型的に肝離断を行い,左肝静脈を自動吻合器により切離し,肝左葉切除を完了し,手術を終了した.手術時間は6時間42分,出血量は100mlであった.合併症をきたすことなく,術後7日目に退院となった.
【結論】肝臓の動脈破格に対して術前画像ナビゲーション,術中血管阻血およびドップラーエコーを用いた血流評価による脈管同定法は,安全な腹腔鏡下肝切除を行う上で有用であった.
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