演題

SY14-6

尾側膵切除におけるsoft coagulation/吸収性組織補強材(ポリグリコール酸,PGA)を用いた膵断端処理

[演者] 秋田 裕史:1
[著者] 高橋 秀典:1, 友國 晃:1, 小林 省吾:1, 杉村 啓二郎:1, 文 正浩:1, 大森 健:1, 安井 昌義:1, 宮田 博志:1, 左近 賢人:1
1:大阪府立成人病センター 消化器外科

【背景】尾側膵切除後の膵断端処理にはFish mouse法や自動縫合器による縫合閉鎖が一般に行われているが,特にthick pancreas症例において膵実質損傷を来しやすく,術後膵液瘻の原因となっている.【目的】当センターでは尾側膵切除術において,膵損傷を最小限にするために,soft coagulationにて焼灼後に吸収性組織補強材(PGA)と組織接着剤を用いた被覆による断端処理(PGA法)を行っている.【手技】膵をメスで切離したのち,まず主膵管を5-0非吸収糸にて縫合閉鎖する.その後,膵断端をsoft coagulationを用いて焼却凝固する.膵断端の被覆にPGA(ネオベール®)を用いる.まずPGAを組織接着剤(ベリプラストP 3ml®)のトロンビン液に浸しておく.フィブリノーゲン液を膵断端に適量振りかけ,トロンビン液を浸したPGAで膵断端を覆うように貼付し,しっかり密着させる.同様の操作を再度行い,膵断端をPGAで2重に被覆し,膵断端処理を終了する.【成績】これまでに連続122例に対しPGA法を施行した.これらの膵液瘻発生率等について,PGA法導入以前のFish mouse法による膵断端処理を行った78例(従来群)をhistorical controlとし,比較検討した.術翌日のドレーン排液アミラーゼ値(中央値)でPGA群が314(25-13801)U/Lに対し従来群は2304(34-100697)U/Lであり,有意にPGA群の方が低かった(p<0.001).またISGPF-GradeB以上の膵液瘻発生率はPGA群で15.6%,従来群で35.9%とPGA群で有意に少なかった(p=0.001).膵切離lineの膵実質の厚さが12mm以上をthick pancreas症例とし,それ以外の症例と比較した.従来法においてはthick pancreas症例におけるGradeB以上のPF発生率は55.6%であり,それ以外の症例(25.5%)よりも有意に高かったが,PGA法におけるPF発生率はthick pancreas症例で11.1%,それ以外の症例で17.4%であり有意差を認めなかった(p=0.58).【結語】PGA法は,手技的に非常に簡便であり,また従来法に比べ膵液瘻を軽減する可能性が示唆された.特に従来の方法では膵実質損傷を来しやすくPF発生リスクの高いthick pancreas症例においても,膵実質損傷のriskを最小化したPGA法では安定した治療成績が期待できる有用な断端閉鎖法であると考えられた.
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