演題

SY14-5

膵切離・断端処理の手術手技- 膵体尾部切除術における脾静脈剥離-個別処理と脾静脈同時切断 -

[演者] 山田 豪:1
[著者] 藤井 努:1, 川井 学:2, 中村 雅史:3, 村上 義昭:4, 里井 壯平:5, 江口 英利:6, 永川 裕一:7, 小寺 泰弘:1, 山上 裕機:2
1:名古屋大学大学院 消化器外科学, 2:和歌山県立医科大学医学部 外科学第二教室, 3:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学, 4:広島大学大学院 外科学, 5:関西医科大学医学部 外科学, 6:大阪大学大学院 外科学, 7:東京医科大学病院 消化器外科・小児外科

[背景]
従来の膵体尾部切除術においては,膵実質から脾動脈及び脾静脈を剥離した後に個別に処理することが一般的であり,20-50%と高率な膵液瘻に惹起する腹腔内出血が危惧されることによる.脾静脈合流部近辺では脾静脈剥離は容易であるため,膵実質と個別に切断できる.しかしながら,膵尾側では脾静脈は膵実質内に潜り込んで存在し,易出血性の小分枝を処理しながら剥離操作を行うことは非常に困難である.近年,自動縫合器の発達もあり,いくつかの施設では脾静脈-膵実質同時切断を標準術式としており,安全に施行できている.同方法は脾静脈を剥離する手間が省略され,非常に簡便であり,手術リスクを低減できる可能性がある.

[目的]
脾静脈個別切断(A群),脾静脈同時切断(B群)のどちらも標準術式として安全に施行されているが,これまでに比較検証はなされていない.したがって,A群に対してB群の非劣性を検証することを目的とする.

[手術手技]
膵切離・断端処理は自動縫合器リンフォース トライステープル™を使用する.膵組織が均等に圧挫されるように5分以上かけて閉め,切離する.A群では,脾静脈を膵実質より剥離した後に切離し,膵実質のみを自動縫合器で切離する.B群では,膵実質から脾静脈を剥離せずに,自動縫合器で一括して同時に切離する.

[教室の結果]
当教室の膵体尾部切除術症例において,リンフォース トライステープル™にて膵切離・断端処理を施行した30例の内訳は,A群:23例,B群:7例であった.手術時間及び出血量については両群間に有意差を認めず,grade B以上の膵液瘻に関しても3例(13.0%) vs. 1例(14.3%)であり,有意差を認めなかった.術後CTによる脾静脈血栓症は3例(13.0%) vs. 5例(71.4%)であり,有意にB群にて高値であったものの(P=0.0067),全例が保存的に軽快した.また,両群において術後腹腔内出血は1例も認めていない.

[今後の展望]
現在,「膵体尾部切除での膵実質切断における脾静脈剥離-個別処理と脾静脈同時切断の多施設共同無作為化比較第Ⅲ相試験(COSMOS-DP trial)」を開始している.膵体尾部腫瘍と診断され膵体尾部切除術を施行する症例に対して無作為化割付を行い,304症例(A群:152例,B群:152例)を集積目標としている.この非劣性が証明されれば,出血のリスクをともなう脾静脈剥離操作を省略でき,手術時間の短縮,出血量の減少など,患者にとって大きな利益を生む結果になり得ると考えている.
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