演題

PL6-6

経過観察10年後に急性増悪をきたし,拡張膵管内にPanIN病変を合併した慢性石灰化膵炎の1切除例

[演者] 小林 基之:1
[著者] 増田 穂高:1, 永井 盛太:1, 松田 信介:1, 鈴木 英明:1
1:永井病院 外科

慢性石灰化膵炎に対する侵襲的治療は有症状例や経過観察中に増大傾向を示す仮性嚢胞などに推奨されている.一方,慢性石灰化膵炎は膵癌の高危険群であり,癌は石灰化に近接して発症し,炎症との関連が指摘されている.今回われわれは経過観察10年後に急性増悪をきたしたため,膵体尾部切除を行ったところ拡張膵管内にPanIN病変を認めた慢性石灰化膵炎の1例を経験した.本例は慢性膵炎の長期経過や発癌の機序について考察するうえで非常に貴重な症例と考えられたので報告する.
【症例】71歳,男性.主訴は発熱,上腹部痛.アルコール3合,41年間の大酒家.2007年の検診時に膵体部の膵石と尾側膵管拡張を指摘され,慢性石灰化膵炎と診断されたが,無症状のため経過観察されていた.2016年10月初旬,突然の腹痛と発熱で当院,救急外来を受診した.【既往歴】2007年,腹腔動脈瘤でステント留置.高血圧.両側鼠径ヘルニア手術.【入院時理学的所見】体温40.7℃,血圧95/65 mmHg,腹部は膨満,上腹部に圧痛を認めた.【入院時検査成績】血液検査では肝機能異常,アミラーゼ,リパーゼの高値,CRP上昇を認めた.腹部CTでは膵体尾部の腫大と周囲の浮腫状変化を認め,膵石の尾側膵管の拡張も増大していた.【入院後経過】輸液,抗生剤投与を開始したが,第3病日には播種性血管内凝固症候群を併発,血液の細菌培養ではKlebsiella Pneumoniaeが検出された.その後も発熱が続き,背部痛もみられるため拡張膵管内容の感染を疑い,第9病日,拡張膵管内容の穿刺吸引を行った.内容液は軽度混濁し,アミラーゼ値は46,805 IU/l,細胞診は炎症細胞のみであったが,細菌培養でKlebsiella Pneumoniaeが検出されたため第12病日,拡張膵管に対する経皮的ドレナージを行った.その後もCandida血症やBacillusによる敗血症などを合併し,治療に難渋したが,徐々に回復し第39病日,ドレナージチューブを残したまま退院となった.全身状態の改善を待って,退院20日後,ドレナージチューブの抜去と急性増悪の再燃予防を目的に手術を行った.【手術所見】膵尾部には周囲と高度に癒着し,脾動脈の温存は困難であったため脾合併膵体尾部切除を行った.膵石より頭側は正常膵に近い膵であった.【病理所見】慢性膵炎を背景に膵体部に大きさ1.7cmの膵石が嵌頓し,その周囲は急性炎症所見を呈していた.嵌頓部より尾側の膵管は著明に拡張し,膵管上皮は部分的に乳頭状増殖を示し,幽門腺化性,扁平上皮化性,粘液細胞化性などの像を認め,PanIn-2と診断した.
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