演題

PL6-3

膵尾部癌根治術後11年目に多発脳転移再発を認めた1例

[演者] 瀬尾 信吾:1
[著者] 伊禮 俊充:1, 首藤 毅:1, 井上 雅史:1, 清水 亘:1, 鈴木 崇久:1, 尾上 隆司:1, 清水 洋祐:1, 檜井 孝夫:1, 田代 裕尊:1
1:呉医療センター・中国がんセンター 外科

【緒言】膵癌の脳転移症例は希少であり,その報告は少ない.【症例】73歳男性.200X年3月に膵尾部癌の診断にて,当科にて膵体尾部切除術を施行(sT3.sN0,sM0,fStageⅢ(tub2,TS2,CH(-),DU(-),S(+),RP(+),PV(-),A(-),PL(-),OO(-),PCM(-),DPM(-),ly0,v0,ne2,mpd(+)).術後補助化学療法は施行せず経過観察中,初回手術後4年目に肝S5に単発の肝転移再発を認め肝S5部分切除術を施行.また初回手術後7年目には右肺単発転移に対して胸腔鏡下右肺上葉部分切除術を施行したが,以降は再発無く定期外来フォローアップとしていた.初回手術より11年7ケ月目に,リモコンの使い方がわからない等の高次機能障害を主訴にER受診.高次機能障害の他に,明らかな神経学的異常所見を認めなかったが,精査目的に撮影した頭部造影CTにて左頭頂部から脳梁膨大部にかけて径20mm~35mm大のring状に造影される多発腫瘤像を認め,単純MRIでは,内部がT1にて低信号・T2にて不均一であり,境界明瞭で周囲に浮腫性変化を伴った多発腫瘤として認められた.腫瘍マーカーはCEA:1.7,CA19-9:2と正常値であった.画像上,頭部の他に明らかな再発を示唆する所見はなかった.多発,膵癌の既往,画像所見等から膵癌多発脳転移再発と診断したが,外科的切除は病変の範囲から困難であり,血液脳関門の観点から抗悪性腫瘍薬の効果も乏しいと考えられたため,45Gy/15Frにて全脳照射(30Gy)+局所放射線照射(15Gy)を行い,脳浮腫予防と抗てんかん薬の内服を開始.放射線治療終了後2ケ月目に撮影した頭部MRI検査では病変の範囲に変化はなく(SD),神経症状の増悪も認めなかったが,照射後半年で跛行が出現.徐々に神経症状の増悪を認め照射後7か月で再入院(頭部MRIにてPD).入院後も神経症状に改善はなく,脳転移再発より1年で永眠.病理解剖を施行し,病理学的にも膵癌脳転移だと診断された.【考察】剖検例においても膵癌が脳転移は起こす頻度は0.3-0.5%程度とされており,また転移性脳腫瘍全体の中でも膵癌由来のものは全体の約0.3%と稀少である.文献的には膵癌診断より神経症状出現までの中央値は29ケ月程度であるが,本症例では初回手術より11.5年と他報告例と比し最長であった.また脳転移診断後のMSTは3-6か月程度との報告もあるが,本症例は約1年の生存期間が得られた.膵癌に対する集学的治療の進歩により,今後も同様の症例が増加すると考えられ,この度その臨床的な特徴を若干の文献学的考察を加え報告する.
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