演題

PL5-6

自然史を推察し得る非典型的病理所見を示した膵MCNの一例

[演者] 鶴田 覚:1
[著者] 豊木 嘉一:1, 米内山 真之介:1, 櫻庭 伸悟:1, 十倉 知久:1, 青木 計績:1, 川嶋 啓明:1, 楠美 智巳:1, 遠藤 正章:1
1:青森市民病院 外科

【はじめに】膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)は若,中年者に多く発生し粘液産生性上皮により形成された単~少数の嚢胞から成る囊胞性腫瘍であり卵巣様間質(Ovarian-type stroma:OS)を伴うことが一つの組織学的特徴とされる.2010年度版WHO分類でOSを認めるもののみをMCNとすると厳密に定義され,MCNでは悪性化の頻度が比較的高く2012年度版国際診療ガイドラインでは可能な限り切除が推奨されるとある.今回,病理学的診断に苦慮し発生学的に示唆に富むMCN症例を経験したため報告する.【症例】49歳女性.人間ドックにて膵体尾部に膵嚢胞指摘され紹介,消化器内科にてCT,MRIにて経過を観察されていた.初診時の膵嚢胞の大きさ12 mmで単房性,辺縁は整であったが約3年の経過の中で24mmへ増大傾向,膵管拡張悪化傾向認め,EUS施行したところ膵体部に内部に隔壁を伴う(cyst in cyst)の所見を認めた.MCNの診断で手術目的に当科に紹介となった.膵体尾部切除術および脾臓摘出術を施行し術後経過良好で退院となった.【結果】摘出標本では膵体部に約2.5×2×2 cmのcystic lesionを認めており,内部は線維組織が区画した多房性で,周囲との境界は明瞭.主膵管との交通は明らかではなかった.cystの内腔側は低異型性の一層の立方状~やや扁平な上皮が被覆し,この上皮はMUC6(+),ごく軽度であるもののAlcian blueおよびPAS染色に染まる粘液を含有していた.上皮下間質組織にはOSを認めていた.【考察】本症例の最終診断はOSを認める点からもmucinous cystadenoma(規約),mucinous cystic neoplasm,with low grade dyasplasia(WHO)の診断となった.しかし,内腔上皮の細胞の粘液の産生が乏しいこと,陰性であることの多いとされるMUC6が陽性であることからMCNとして上皮細胞と間質組織の性状が一致せず診断には疑問が残る.MUC6の陽性は上皮細胞が経過の中で胃粘膜化生を生じていたとも考えられる.OSを伴うMCN症例の中で粘液産生を認めないNonmucinous cystadenoma of the pancreasを一定頻度で認め,それらの上皮細胞は低異型性であったという報告例もあり,OSは高齢者の場合に萎縮しうる報告やSCNは中高齢に多いという報告も踏まえ,MCNからSCNへの変化を本症例は捉えている可能性も推察された.【まとめ】MCNの自然史はまだ解明されていないのが現状であるが,今後症例の蓄積により手術適応などが厳密に検討されることが望まれる.
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