演題

拡大視野下微細縦隔解剖に基づいた胸腔鏡食道癌根治術

[演者] 大杉 治司:1
[著者] 成宮 孝祐:1, 工藤 健司:1, 李 栄柱:2, 岸田 哲:2, 藤原 有史:2
1:東京女子医科大学 消化器病センター外科, 2:大阪市立大学 消化器外科

左側臥位,モニタ対面反転法により,開胸手術と同じ解剖関係となり胸腔鏡・通常開胸手術間のフィードバックが容易となる.
カメラを近接し5~20倍の拡大視を得る.繊細な把持が可能なデュべーキー型の鑷子を用い,熱源は単極電気メスのみとする.拡大視野下では縦隔にも明らかな層構造を確認出来,これに沿って本のページを開く様に剥離する.解剖層に沿った剥離は組織破壊が最少となるが,層を破る手技は郭清が論理的でなくなり,不要な出血をまねき侵襲が増加する.
縦隔胸膜直下の最外層には迷走神経,胸部交感神経幹からの枝が走る.反回神経は神経上膜を露出する層で剥離する.血管床を温存する層で剥離すると気管血流は温存される.大動脈は,線維束,胸部交感神経幹の枝よりなる線維性の膜を温存する層で剥離し,この膜と左胸膜との癒合を露出することで大動脈左側のリンパ節も郭清される.胸管はこの線維膜の下層に存在し,合併切除の際には大動脈血管床からの出血を見る.肺門のレベルでは胸壁側と縦隔側から胸管に入る集合幹管が認められる.集合管壁にも平滑筋が存在するためリンパ管より壁は厚い.食道の外縦筋は,左肺門のレベルで食道から離れ食道気管筋となり気管・気管支の軟骨部左側縁に付着する.また,肺門より尾側では食道胸膜筋となり左胸膜に付着する.両側の気管食道線維束を切離後,気管・気管支を左側に反転し,左側軟骨部沿って剥離し左反回神経を周囲リンパ節とともに,交感神経心臓枝を目標に気管から離す.腹側よりリンパ節に入る血管を凝固し,背側に圧排すると反回神経とリンパ節は交感神経心臓枝を入れる膜の上を滑る様に剥離される.その後反回神経食道枝を切離することにより両側甲状腺下極までの論理的な郭清が可能となる.気管分岐部リンパ節は固定している迷走神経枝,気管支動脈を切離することによりリンパ節群の可動性が上がり安全な郭清が可能となる.
リンパ節は門で輸出リンパ管と静脈が出て,動脈と血管作動性の無髄神経が入りリンパ節自体を固定している.門以外の皮膜を貫いて輸入リンパ管のみが入る.各部位でリンパ節門の方向は決まっておりこれを理解して剥離することにより論理的郭清が可能となる.
これまで重要臓器損傷などの偶発症はなく,在院死亡は0.7%,領域制御率は95%で,pStage 0,1,2,3,4aの5年生存率はそれぞれ92%,88%,69%,52%,27%であった.
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