演題

PK6-3

膵液瘻の発生機序を意識した安全な膵空腸吻合と周術期管理

[演者] 小林 慎二郎:1
[著者] 勝又 健太:1, 小野 龍宣:1, 瀬上 航平:1, 星野 博之:1, 片山 真史:1, 小泉 哲:1, 大坪 毅人:1
1:聖マリアンナ医科大学病院 消化器・一般外科

【諸言】膵頭十二指腸切除術(PD)における膵液瘻(PF)の発生機序は①膵空腸吻合部の縫合不全②膵断端の分枝膵管からの膵液漏出③膵被膜損傷または残膵炎による膵液漏出からなり,②③がGradeA,②③に感染が併発した場合および①がGredeB以上になると考える.この仮説を説明すべく膵空腸吻合手技および周術期管理の変遷とPFの発生状況を検討した.【対象と方法】PD298例が対象.術者がそれぞれの考えで膵空腸吻合(柿田変法)を行っていた前期群90例,手技を定型化しERASも導入した中期群88例,手技を膵断端圧迫吻合に変更した後期群120例に分けてPF発生率とPF症例のドレーン造影所見について検討.PFはISGPF基準に加え,GradeBはドレーン造影で吻合部が描出されなかった(B1)と描出された(B2)に分類.【膵断端圧迫吻合】4-0非吸収糸を膵実質前後壁に貫通後,膵断端の後面に当たる部分の空腸漿筋層に水平マットレスを行いふたたび膵実質の後壁から前壁に貫通,これを主膵管頭側と足側に1針ずつ行う.内層吻合終了後,先ほど膵実質・空腸漿筋層の糸を膵前壁に相当する空腸漿筋層に短軸方向に運針し結紮.【周術期管理】感染制御としての腸内細菌叢安定化(腸管前処置の簡略,早期経口摂取開始,整腸剤投与),ドレーン早期抜去など.また,GradeBのPF発生時は早期・頻回なドレーン交換を行いGradeCへの移行を防止.【結果】GradeA,B,Cの膵液瘻発生は前期群で14.4%(13例),21.1%(19例),6.7%(6例),中期群で32.9%(29例),9.1%(8例),1.1%(1例),後期群で32.5%(39例),0.8%(1例),1.7%(2例)でGradeB以上のPFはそれぞれの群で有意に減少していたが(P<0.05),GradeAは前期群よりも中・後期で増加していた.GradeB1は前期, 中期, 後期でそれぞれ16,6,1例であった(P<0.001).【考察・結語】膵空腸縫合不全は手技の向上で防止可能である.結紮力が強いと分枝膵管断端からの膵液漏出は減るが膵被膜損傷や残膵炎は増える.逆に力を弱くすると膵被膜損傷や残膵炎は減るが分枝膵管断端からの膵液漏出は増える. 膵断端圧迫吻合では,空腸が膵断端を包み込むように密着し,結紮糸で膵を損傷しないように空腸がクッションの役割になるので分枝膵管断端から漏出する膵液を軽減させられるが,圧迫が強いと残膵炎の誘因となる.分枝膵管からの膵液漏出や残膵炎を完全に防止することは不可能だが,個々の症例に応じた結紮の力加減で膵液の漏出を最小限にし,ERAS管理をはじめとした感染制御で膵液瘻の重篤化を予防できる.
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