演題

PJ5-5

膵癌洗浄腹水診断における癌特異的メチル化マーカーの有用性の検討

[演者] 田辺 裕:1
[著者] 林 真路:1, 高見 秀樹:1, 山田 豪:1, 中山 吾郎:1, 杉本 博行:1, 小池 聖彦:1, 藤井 努:1, 藤原 道隆:1, 小寺 泰弘:1
1:名古屋大学大学院 消化器外科学

背景:膵癌において腹膜播種は重要な予後規定因子のひとつである.化学療法の進歩に伴い,術前に審査腹腔鏡手術にて正確に病態を把握し,適切な治療選択を行うことがより重要となってきている.腹膜播種の同定には肉眼的観察や洗浄腹水細胞診を利用するが,より感度の高いアッセイを確立して従来の方法と比較することを考えた.
方法:膵癌特異的にメチル化を来たす遺伝子を網羅的に検索した論文(Kisiel et al,
2015, Clin Cancer Res)から CD1Dを取り出して標的遺伝子とし,鋭敏なメチル化測定アッセイ(Quantitative Methylation Specific Polymerase Chain Reaction(QMSP))を確立した.まずこの遺伝子が膵癌特異的なメチル化をおこしているかについて,当科の膵癌切除症例(1989~2005年)のうち検体利用可能な49例を用いてQMSPアッセイを施行した.次に本年施行した進行膵癌症例の審査腹腔鏡手術症例のうち,術中腹腔内洗浄検体を利用可能な4例のQMSP値について検討した.
結果:膵癌組織検体49例においてQMSP値は非癌部,癌部でそれぞれ0.49(0-4.64),8.58(0.09-62.0)であり,有意に癌部で高値(P<0.001,Mann-Whitney U test)であった. 続いて術中腹腔内洗浄検体4例のQMSP値を測定するとそれぞれ0.7,0.0,8.7,0.0であった.非癌症例での腹水検体でのQMSP値がすべて0.0であることから,この結果は陽性,陰性,陽性,陰性と判定した.実際にこれらの細胞診の結果はそれぞれ陽性,陰性,陽性,陽性であったため,3/4 の症例でQMSPによる診断と細胞診検査結果が一致した.
結論:分子生物学的な手法により,少なくとも病理組織学的診断と同等の微小腹膜播種同定は可能であると考えられた.症例の蓄積及び対象とする遺伝子マーカーパネルの作成により,より鋭敏な癌特異性をもつアッセイを確立し,予後予測に生かせる可能性が示唆された.
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